歴史的にペルシャ帝国・オスマン帝国支配下にあったクルド人地域(クルディスタン)は、現在のトルコ、イラン、イラク、シリアに分裂して拡がっている。トルコには1000万人が住み、人口の2割、イランに600万人1割、イラクに400万人、2割を占めている。各国で「少数民族」として迫害や同化政策を受けてきたが、長期間の闘争によって各国社会に大きな影響を与えてきている。
昨年末、トルコ・シリア国境の町コバニでイスラム国(IS)勢力と地元のクルド人組織が衝突し、ISが敗退した。ここでのクルド人女性組織(YPJ)の闘争は「さまざまな違いを乗り越えてクルド系住民を結集させた(クルド労働党軍司令官)」といわれる。
民族主義の伝統をくむ組織、また民主主義・社会主義を目指す諸組織が「巨大な脅威」の中で団結した。一方、6月のトルコ総選挙で親クルド系政党の国民民主党(HDP)が得票率10%の政党条件条項を突破し、単独与党政府成立を阻止した。
しかし、7月にはトルコの町スルッズでコバニへの人道援助をしようとしていたクルド人青年組織の集会で爆発が起き、数十人が死亡した。こうした情勢下で連立政権交渉は失敗、11月1日に「やり直し選挙」が行われる。
トルコ国軍は8月28日、「IS空爆」を理由に米主導の有志連合軍のシリア領攻撃に参加、同時にイラク北部のクルド系組織支配地域の空爆も継続する。トルコリラの対米ドル相場が年初から25%下落する中、戦争モードが高まり、政情不安が懸念される。
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