ベネズエラのチャベス政権をはじめ2000年代に選挙を通じて左派が勝利した中南米各国でクーデターの危険性が高まり、不安定化が拡がっている。背景には米政府の西半球政策(左派政権をなくす)と各国の右派勢力との連携がある。
ブラジルではペトロブラス石油公社の汚職を巡って現ルセフ大統領を弾劾する動き、18年大統領選挙候補者ルラ・ダシルバ氏に対するマスメディア攻撃、これに対する「土地なし労働者運動」や社会運動組織の抗議行動、さらに右派クーデターの危機が高まっている。
リオオリンピック開催を間近に殺人などの犯罪も増えている。昨年11月に成立したばかりのアルゼンチンのマクリ政権下では先住民活動家の逮捕、緊縮政策による外国金融機関への対外債務返済と貧困反対の国民運動の衝突、さらに大統領自身のタックス・ヘイブンを経由した蓄財が暴露された。コロンビアでは元上院議員で人権活動家の暗殺未遂事件が起きた。
ベネズエラでは昨年、右派が議会過半数をとり、3月に「大赦法」を可決、現政権が拘束した犯罪者を「政治犯」とし、マドゥーロ大統領退陣を狙っている。タチラ州では反政府デモ参加者によって若い警察官2人が殺害され、北西部セイバ市では統一社会主義党の市長が自宅付近で暗殺された。
街では政府補助金つきの低価格品を買占め、高値で売る「バチャケオ」が横行、断水・停電を伴う「経済戦争」に政府は緊急食糧配給を行っているが、反政府勢力は「政策失敗」を主張している。
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