米・メキシコ国境は3千キロ超、 リオグランデ川に沿って西はカリフォルニア州、東はテキサス州まで延びる。1846〜48年の「メキシコ戦争(米側)」、「米介入戦争(メキシコ側)」と名称は異なるが、戦争により米は上記2州に加え、現ネバダ、ユタ、アリゾナ、ワイオミング、コロラドの各州領域を獲得、独立時の東部13州から太平洋に港を持つまでに膨張し、メキシコは領土の半分を失った。両国の歴史は力の支配の上に成り立っている。
1月25日、ワシントンでこの国境線に「壁を建設する」大統領令が署名された。さらに、大統領令に従わない都市・郡には連邦政府からの資金援助を打ち切る内容が含まれており、移民の都市であるニューヨーク市の当局者は「移民は市の経済や文化に貢献」と反発、市民も怒りの声をあげている。メキシコでは「人権侵害・人種差別」として国連に米国を提訴すべきという世論が広がっている。
ペーニャニエト・メキシコ大統領は大統領令に「遺憾、認めない」と応じたが、注目点は「北米自由貿易協定」の行方である。協定は94年1月1日に発効したが、米労働者の雇用減(米企業の国外流出)、メキシコでは農業者の没落(補助金を受けた北米産農産物の大量流入)、憲法27条(=先住民の共用地保護)の廃止を求めた同協定反対のサパティスタ民族解放軍の蜂起に至り、協定は両国民に不人気だ。
国境では強制送還された家族との数分間の再会、Hug not Wallが時々、開かれている。
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