イラク・クルディスタン自治区および過去数年でクルド人勢力が獲得した地域(キルクーク含む)で分離独立の賛否を問う住民投票が9月25日に行われ、自治政府バルザニ議長が「独立派勝利」を宣言した。
イラク憲法に住民投票規定はなく、中央政府は「違憲」として認めていない。結果について法的拘束力はないが、イラクには800万人が居住、人口の15〜20%を占める。周辺国のクルド人は、トルコの人口の19%、シリアとイランの10%といわれ、「国」をもたない最大の民族とされている。
投票に先立ち、国連安保理は「不安定化の要因」と警告、トルコ政府は「違法である」としてシリアとイラクに新たに侵攻する意図を示し、米政府は歴史的にクルド独立を支持、武器供与までしてきたにもかかわらず、「領土保全を崩す」と反対を表明した。イランは「イラク中央政府を支持する」と発表した。
一方で分離独立を強力に支援しているのはイスラエル政府である。『フィナンシャル・タイムズ』紙は同国の石油輸入量(15年)の4分の3はイラク・クルディスタンからと報道、ネタニヤフ首相も「クルド人は過去も将来も信頼できる同盟者である」と述べている。ベギン元首相が明らかにしたように、同国とクルド人の関係は60年代から農業・産業技術・教育面で緊密で、イスラエルの軍事・情報組織も「独立を支援する」ため積極的に活動してきた。現在、クルド系イスラエル人が分離独立後のクルディスタンに定住する合意ができているという。
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