ミャンマー(ビルマ)の正式国名は、「ミャンマー連邦共和国」(日本外務省)である。南北に長く、面積は日本の約1・8倍、5200万人が暮らす多民族国家だ。英領になる以前は王朝が興亡。19世紀、三度の英軍との戦争で植民地となった。第一次・第二次戦争を通じて独立義勇軍が力量を得て1948年、英連邦を離脱、独立した。
戦後、国際社会から孤立はしていたが、中国、インドと良好な関係をもち、経済関係を築いた。2010年に新憲法の下で総選挙が行われ、民政移管が始まり、15年、国民民主連盟(NLD)が圧勝、アウン・サン・スー・チー氏が国家最高顧問・外相を務める現政権が成立した。
ミャンマーでは135の公式民族が登録されているが、ロヒンギャの名はなく、市民権がない。虐殺を恐れて、すでに70万人超が隣国バングラデシュに難民として流出している。この人々は国境概念のない8世紀の王朝時代より北部から移住してきた人々、奴隷や戦争捕虜として連行された人々、英統治時代に労働者として強制移住させられた人々の後裔であり、英領時代に異言語の民族間の相互接触を阻む政策がとられたため分断された。去る11月下旬、ローマ法王がミャンマーを訪問したが、難民問題には言及しなかった。
現代政治的には、中国の進める「一帯一路」と日米主導の自由で開かれた「インド太平洋戦略」の利益の交差する地帯だ。一方、難民危機の隙をついてアルカイダ系の過激な集団が入り込み、事態を複雑化させている。
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