4月18日以来、死者と負傷者を出す暴力的な街頭行動がニカラグアで起きている。おもに学生と警察との衝突であるが、病院・野球場を含む施設、官庁などが襲撃され、政府支持の文化イベントも攻撃対象にされた。背景に政府の社会保障優先政策に対する財界(COSEP)の反対がある。オルテガ政権は社会保障制度への企業主の負担増大を求めているが、財界は年金受給年齢の引き上げ、年末ボーナス廃止、病院の民営化を要求している。
ニカラグアでは1979年にサンディニスタ革命が内戦の末に勝利、三代続いたソモサ独裁政権を倒し、国民が社会正義を実現する機会を得た。しかし、レーガン米政権が介入、イラン・コントラ事件などを起こし、再び内戦状態になった。88年に和平合意が成立し、90年の選挙で野党連合(UNO)のチャモロ政権が勝利した。
しかし、その後の政権によって社会保障のための基金が財界に流用されるなど汚職が問題化し、07年1月にサンディニスタ政権が復権した時、すでに社会保障制度は赤字となっていた。現在、算定される赤字7500万ドルの解消をめぐって、社会サービスを維持するか、企業利益を優先するかで対立が起きている。学生による暴力的街頭行動はベネズエラの様相と似ており、「政権転覆」を図る外国勢力の関与が指摘されている。
また太平洋と大西洋をつなぎ、巨大コンテナ船が航行できるニカラグア運河プロジェクトが香港の会社によって着手されており、米中の緊張関係もある。
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