トランプ米大統領は5月24日、金正恩朝鮮労働党委員長に「6・12米朝首脳会談」の中止を通告。韓国の文在寅大統領は「現在のような対話法では解決は困難。米朝首脳が直接・緊密な対話を」と訴え、26日には南北首脳会談を開いて金委員長の会談への意欲と「非核化」を再確認。同時にトランプ大統領は南北会談を歓迎し、27日には準備の米国代表団が板門店に入った。
この経過から何があきらかになったか。首脳会談は米朝が主導して予定されたのではない。トランプ政権の本性は、パレスチナでの大量殺戮支持に示されるように変わっていない。イラク戦争と並び朝鮮に核開発を推進させる動機だった「リビア方式」も誇示した。
「朝鮮の国際約束違反」といわれる核開発に追い込んだ原因はこういった長年の米国の態度と、それに追随する日本と韓国の保守政権の姿勢にあった。
しかし核による「抑止力」競争がチキンゲームの極限に達していたところに、保守政権を倒して文在寅政権が発足し局面が一気に転換した。朝鮮も核開発で民衆の困窮を招くのは本意ではない。そして南北の平和的統一に向けての民衆の切望と世界の反核の世論があった。「中止」の危機も2回目の南北会談でとりあえず打開できた。
問題は、日本がどう向き合うべきかだ。
トランプ政権の「駆け引き」の思惑は見え透いている。「圧力」をかけたから朝鮮が折れたという虚構を維持したいのだ。この虚構にしがみつくのが「対話のための対話は無意味」と、米の圧力路線に尻尾を振っていた安倍政権だ。「中止」に支持を表明した政権は世界で珍しい。「国難」を口実に9条改悪を再燃させる好機到来と思ったのか、南北分断の遠因となった植民地支配に何の責任も感じていない。
また「4・27板門店宣言」で確認した「朝鮮半島の非核化」が、米の核の傘も畳むことは世界の常識だ。それを朝鮮だけの非核化と歪曲するのは、安倍政権と日本の保守メディアのみだ。彼らは日本の核の傘を畳まれては困るのだ。トランプ氏すら26日には「朝鮮半島の非核化は…世界にとって素晴らしい」と発言したのに、NHKなども相変わらず「北の非核化」と報じている。「トランプの前のめり」に心配までするメディアもある。
トランプ氏も安倍氏も「抑止力こそ有効」と事あるごとに宣伝するから、6・12会談も予断は許さない。実現しても非核化の具体化がそう簡単にできるものではない。しかし大きな一歩を踏みだすことは間違いない。安倍政権がこれを妨害することのないよう、「武力で平和は守れない」と声を上げていこう。
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