人口1億人、84の民族が暮らすエチオピアでここ数カ月間、各地で暴力事態が発生、不安定な状況が続いている。7月末には水力発電建設計画の中心技術者が首都アジスアベバで射殺される事件も起きた。今年4月にアビイ・アフメド新首相(41歳)が議会で選出されてからの出来事である。
新首相は海外に逃れた内戦時代の政治家に帰国を許可し、海へのアクセスという国境紛争でもめた隣国エリトリアに接近する政策、中国との経済協力関係から米国およびIMFにシフトする方針を進めようとしている。エチオピアはソマリア、ジブチとならんで「アフリカの角」に位置し、歴史的には唯一、欧州の植民地にされなかったアフリカの国であり、また内陸国である。
新首相は中国の支援で進めるアジスアベバ−ジブチ間の鉄道建設を批判し、また2020年完成を目途に進められてきたダム建設についても10年遅れると発表した。さらに、サウジアラビア・アラブ首長国連邦の経済に依存しているエリトリアとの新たな関係構築など、キリスト教徒とイスラム教徒が混在している国での衝突事件には国際関係の力関係が反映されている。紅海の対岸では、イエメンでサウジの侵略戦争が進行している。
一方、「米国の裏庭」といわれた西半球では台湾と外交関係を断ち、中国と国交樹立する国が出ている。17 年にはパナマ、今年5月にはドミニカ共和国、そして8月21日のエルサルバドルである。米中関係は両国間の貿易摩擦にとどまらない国際政治を動かす要因になっている。
(富山) |