民主党の予備選挙は、サンダースの撤退表明後、延期されていた州で徐々に行われていた。6月6日のグアムの開票でバイデンが指名に必要な1991人を上回り、民主党の大統領候補に確定した。トランプとの差は、新型コロナ感染では広がらなかった。しかし、白人警官によるジョージ・フロイド氏殺害事件による抗議運動への対応で、トランプは支持を失い、バイデンのリードは広がりをみせている。民主党内の左派・進歩派はサンダースというエンジンを失い、苦闘している。
きしむトランプの岩盤支持層
トランプは、新型コロナ対策で評価を落としたが、バイデンも支持率が下落し、5〜6%差は開かなかった。
ところが、白人警官によるジョージ・フロイド氏殺害事件に端を発した人種差別への抗議運動の世界的な高まりのなかで、トランプが支持を下げてバイデンが上げることになり、支持率の差は8%にまで拡大した。
しかし、トランプの岩盤支持層といわれるキリスト教原理主義の福音派(国民の4分の1を占めている)や白人労働者の支持はいまだに衰えていないものの、連邦軍のデモ鎮圧問題で今までにない批判が広がり、きしみ始めている。
新型コロナ感染が再び増加傾向を示し、それが経済への悪影響を及ぼし始めている。ブラック・ライブズ・マター運動はあらゆる人種差別問題に発展している。地鳴りのような社会運動の進展が、アメリカの世論にどのような結果をもたらすかは誰にもわからない。
大勢はバイデンに有利だが、選挙の結果を左右するのは、やはりスイング州といわれる民主・共和の支持率が拮抗している州の結果になる。6月段階では、ノースカロライナ(0・3%差でトランプ)を除いてフロリダ、ペンシルバニア、オハイオなどでバイデンが3〜4%の差で勝っている。(世論調査はRCP:RealClearPoliticsによる)。
左派と深まる溝
サンダースが撤退表明したとき、バイデンとの政策協議入りが表明されたが、いまだに合意成立の情報はない。
バイデン陣営は自信を強めつつあり、サンダースに対してバイデン支持への圧力を強めている。サンダースは5月17日、ABCテレビに出演して「最終的にはサンダース支持者はバイデンを支持する」と発言したものの、「バイデンもサンダースの支持者に『あなたたちの置かれている状況は理解している』と伝えなければならない」と述べ、バイデンに歩み寄りを迫った。
実際、進歩派の中心的な組織であるDFA(アメリカのための民主主義)も、まだバイデン支持を表明していない。DSA(アメリカ民主的社会主義者)は、5月15日の全国政治委員会の声明で「アメリカ民主的社会主義者はバイデンを支持しないであろう」と意思表示をした。
上院予備選挙で勝てず
しかし、今回改選される上院の予備選挙で、進歩派は勝利できていない。DFAのホームページ上には、「もし、上院で民主党が勝ったとしても、グリーン・ニューディールや国民皆保険制度が直ちに通過することは期待できない」という記事も掲載されている。
サンダースが快進撃をしていた年明けとは、まったく違った情景になっていて、バイデン支持派に押されている。とくに州全体が選挙区である上院の予備における進歩派・左派の連携の不十分さが指摘されている。
DSAは、「運動と力を戦略的に強化すること」を意識している。また、ブラック・ライブズ・マター運動を「歴史的蜂起」ととらえて、各支部で積極的かつ組織的な取り組みを開始している。 |