去る6月にヒマラヤのラダック地方のガルワン渓谷で中印軍が衝突し、双方に死傷者を出す事態が発生、再び9月7日に「威嚇射撃」をめぐって両政府の主張が対立、1962年以来の緊張下にある。
ラダック地方はインド領ジャンム・カシミール地方の東部にあり、標高4千メートルから6千メートルに位置し、年平均気温はマイナス0.6℃、酸素が薄く、強風地帯である。実効支配線(LAC)周辺では非武装を原則としているため、前線の兵士たちは石・こん棒・ナイフ等で相対し、死者の多くは転落死であった。
もともと英領インドと当時のチベットとの境界線が不明確であったこと、昨年、モディ政権がジャンム・カシミールから特別自治権を剥奪し、ラダック地方を切り離して二地域を別々の連邦直轄領とした要因もある。
住民の多数はチベット族で仏教徒であり、インド・パキスタンの領土紛争でヒンドゥー・イスラムの抗争にも巻き込まれてきた。インド側の呼称ラダックに対し、中国側呼称はアクサイチンである。またシッキム州、アルナーチャル・プラデシュ州など中国との境界周辺のインド領の州には仏教徒が住んでいる。中印両政府は外交努力を続けるという。
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モディ・インド政権は中国・ロシア主導の「上海協力機構(SCO)」やBRICSにより経済発展を狙い、米主導「自由で開かれたインド太平洋戦略」を通じて軍事力強化をめざすという、危ういバランスの上にある。コロナ禍も拡大、米国に次ぐ多数の感染者を出している。
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