
ブラジル発の『神々しい歌姫』と題した本作は、8人のドラッグクィーンのドキュメンタリー映画。男性として生れたが、女性として生きるトランスジェンダーの彼女たちも今や70歳代。歌姫の拠点となっていたヒバル・シアターは監督の祖父が開いたもの。
創立70周年記念で開催した「ディヴァイン・ディーバ・スペクタル」では劇場から巣立った歌姫が集まった。歌姫たちの大半は長年他の職業についていたため、久しぶりの舞台だ。このプログラムにリオ・デ・ジャネイロは大騒ぎになった。2014年には歌姫たちのデビュー50周年祝賀イベントが行われた。この舞台で撮影が終了するまでの間、8人の人生ドラマが語られ、恋愛関係もありのままに見せている。かつての貴重で華麗な映像と共に。
彼女たちが歌姫になった60年代から70年代のブラジルは軍事独裁政権だった。文化が奪われただけでなく、女装するなんて、とんでもない時代だった。劇場の中では自由だったが、弾圧から飛び出しパリやニューヨークへ。成功した人もあるが、それは大変な道のりだった。
日本でもトランスジェンダーの歩みはさまざまだ。ピーターは1年間休養した後、本名の池畑慎之介にもどるという。80歳を過ぎても独特のオーラがある美輪明宏は、本作の歌姫に似ているが、彼女たちには自由を愛するユーモアと哀愁がある。
自由に生きることはむずかしいが、生きている限り求めたいものだ。
9月1日(土)よりシネマート新宿他にてロードショー
【きなみゆう】
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