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2018.11.06
葉山嘉樹碑前祭とシンポジウム
 
 「葉山嘉樹が名作『セメント樽の中の手紙』を落合ダム工事の飯場で書いてから今年で九十四年たちましたが、読む人を感動させる新鮮さは今も失われていません」

 この「呼びかけ文」に、岐阜県中津川市で開催された文学碑前祭とシンポジウムの意義が凝縮している。 

「葉山嘉樹没後七十三年・葉山嘉樹文学碑建立六十周年・葉山嘉樹記念文集発行」のために、葉山嘉樹記念事業実行委員会(佐藤光司実行委員長)主催で10月14日、落合5号区クラブで碑前祭とシンポジウムが開かれ60人の関係者が集まった。

 碑前祭では、佐藤光司実行委員長、来賓として市長代理の大井久司中津川副市長と「堺利彦・葉山嘉樹・鶴田知也の偉業を顕彰する会」の小正路淑泰事務局長が挨拶、中津川市教育長を紹介。

 続いて、「セメント樽の中の手紙」朗読と歌が披露された。子息の葉山夏樹さんからは心に響く挨拶があった。その後、全員で文学碑にお酒とお花を献上して葉山を偲んだ。ここに、カナダからの留学生で葉山を研究している大阪大学大学院のリチャード・ウィリアムさんが参加した。

 シンポジウムでは研究者から「葉山嘉樹を語る」の題で葉山文学についての発表があり高い評価がなされた。

 パネリストは、木村直樹(郷土研究家)「名古屋時代の葉山嘉樹」、原健一(「民主文学松本支部)「葉山との関係性」、松木詠史(岐阜県立中津高等学校教諭)「『セメント樽の中の手紙』を生徒に教えて」、大ア哲人(文芸評論家)「葉山嘉樹『淫売婦』とセルバンテス『ドン・キホーテ』の共通性」が報告された。 シンポジウムは活発な発表と質問があり、参加者は笑いも混じるなか真剣に聞き入っていた。 葉山夏樹さんの感想は印象深かった。

 「皆様から評価されるということは、彼が生きてきた50年間、世の中には常に不条理がある。この不条理に怒りをぶつけたことに共感を生んでいるかな、今もあるわけでどんな社会になってもある。

 それをどのようなかたちで解決するかは、その時々で大事なことだ。権力、制度に反抗する、反対してバランスをとっていくことが大事だ。そこに父、嘉樹の存在感があったのかなと思う」

 現代に生きるプロレタリア文学の作品を残した葉山嘉樹の名は、時代を超えて語り継がれていく。

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