「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の中止問題が神戸に飛び火≠オた。
「あいち」の芸術監督を務める津田大介氏らを迎えて8月18日に神戸市内で開催される予定だったシンポジウム「アートは異物を受け入れるのか」が8月9日、主催者の神戸市とTRANS―KOBE実行委員会(事務局は市外郭団体の神戸市民文化振興財団)によって中止が決定されたのだ。
シンポへの津田氏の登壇に多くの抗議が寄せられ、「本来の趣旨が期待できず、会場の混乱も予想される」が理由とされた(本紙8月27日号既報)。
表現の自由をないがしろにする今回の判断について、その経緯や理由などを検証するとともに、改めてこの問題に表れたものを考えようと、「『津田大介さんの神戸シンポ中止』問題を考える市民の集い」が8月31日、神戸市内で開かれた。急な呼びかけにもかかわらず、160人の市民が参加した。憲法改悪ストップ兵庫県共同センターと「こわすな憲法!いのちとくらし!市民デモHYOGO」が共催した。
シンポジウムの中止を巡ってこの間、新社会党兵庫県本部をはじめさまざまな団体が、主催者に対して中止決定に抗議し、決定の撤回を求める申し入れを行ったり、声明などを出している。
集いではまず、中止決定を巡る経過などについて、味口俊之(日本共産党神戸市議団)、粟原富夫(つなぐ神戸市議団・新社会党)の両神戸市議から報告・解説が行われ、申し入れの際のやり取りの中で明らかになった事実や経過が紹介され、実行委員会として十分な審議もないまま、混乱の回避だけを優先させた判断だったことが明らかにされた。
表現の自由を脅かす圧力に対して、行政としての毅然とした対応や責任も見られなかった。また、一部の神戸市議の圧力や介入についても報告された。
続いて伊藤健一郎・立命館大学講師が、「あいち」の企画展「表現の不自由展・その後」が不当な圧力によって中止に追い込まれた事態ともあわせてコメント。トラブルの防止が優先され、表現の自由、公正さや正義が失われていると感じると述べるとともに、ヘイト思想、ヘイトスピーチにも言及し、問題の根底には戦争責任や加害の歴史に向き合ってこなかったことの反映、歴史認識の問題があるなどと提起した。
その後、参加者による意見交換が1時間以上にわたって活発に行われた。
「表現の自由とは何か」という問題やヘイトへの対応の問題を巡る議論が行われるとともに、「神戸の場合は、まだ何も起きていない段階から津田氏の考えを否定し、排除することの容認につながるもので、表現の自由にとどまらず、思想・信条の自由の侵害にも関わる。ある意味で『あいち』の企画展以上に深刻な事態ではないか」などの意見も出た。
集いでは、「いま日本社会に不寛容の重苦しい風潮が広がっているとき、これに拍車をかけるようなことを自治体がしてはならない。神戸市がこの中止決定を改め、シンポのやり直しをするよう強く願う」などとしたアピールを最後に採択し、今後もこの問題を広く訴え考えていくことを確認した。
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