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2018.12.25
全国農業問題連絡会第16回総会・視察交流会
やらせる農業からやりたい農業に

40歳で脱サラ農民農業は理屈でない
 記念講演が2日目に行われました。「ファームげんのじょうの過去、現在、未来」と題して、ファームげんのじょう・秋鹿好生園長を講師に秋鹿農業論を展開していただきました。

 秋鹿園長は「私の話は、農業現場で働く一農夫の考えた方であり一般化できない」と断りながら、義父の「農業を継いでくれるのか」との願いもあり、40歳の時、NTTを退職、「農業しよう」と決断しました、と農業とのかかわりを紹介、農業への熱い思いを語ってくれました。

 収穫感謝祭は、就農したころから考えていましたが、実際に始めることができたのは就農11年目の秋でした。2〜3年もすれば、そこそこやれると思っていた自分の農業に対する甘さを自覚させられるとともに、農業は理屈ではなく経験の蓄積によるところが大きいことを学びました。

 収穫感謝祭を始めたころは家族で準備していましたが、東京から親子連れが来るなど参加者が増え、てんてこ舞い。そこで新社会党の仲間の力を借りて「収穫感謝祭実行委員会」をつくり会場設営や食材の手配、ゲームの企画などを手分けして運営しています。

 参加者は庭先にあふれるようになりましたが、「参加者がグループを作りそれを超えた交流にならない」とか「変な、得体が知れない政党がついているなどと地元になじみ切らない部分があり」(地元に「町議」を誕生させたり、「航空機騒音から生活を守る会」の世話をすることによって徐々に改善しています)、その改善がこれからの課題です。

 これからの農業を活性化させる方策として私が考えてきたこと(現場感覚)は、第1に「やらせる農業からやりたい農業に変える」ということです。

 農業には向き不向きがあります。農家の長男だからと言って農業に向いているとは限りません。農業をやりたいものが農業をできるように仕組みを変える必要があるということです。まず経営を法人化し、次に農地の所有と利用を分離し、経営権(農地の利用)を農業がやりたい新規参入者に譲渡できる仕組みを作ることです。

 これが実現すれば、後継者不足や新規就農者の資金不足の問題がかなり改善されると思います。

 第2は「農村のリーダー作り」です。農村を継続的に牽引していくリーダーです。全国視察交流会で見てきた「彩」や「彩々来て屋」、「久保田営農組合」、「上川町農業公社」などを見ながら学びました。

 農村にはリーダーがいない。村社会では、変化を望めば嫌われる、突出すればたたかれる、役員は持ち回りで日替わり定食を旨とし、仕事は前年度踏襲型をよしとする―。これを変えなければ停滞から脱することができません。困難に立ち向かうリーダーが必要なのです。

農業はいのちを支える生命産業
 第3は「生産者と消費者の交流」です。農産物の売り手としての農家と買い手としての消費者の利害が背反する関係を、交流を通じて生命を支える食料という共通認識を作り、調整するということです。お互いの理解の上で再生産可能な流通システムを作り、農家所得の安定化を図ることが目的です。

 第4は「農家の主体性を保証する農政」です。こうすれば補助する、保護する、補助金をつける農政は、補助金制度に合わせる農業になり、農家の主体性を著しく弱めました。そうではなく、このような経営をしたいという農家の主体的な経営計画を支える補助金制度に変える必要があると思います。

 第5は「農業の担い手を農家から農業者に変えること」です。個人としての農業者の概念をきちんと定義すべきではないかと思います。その上に立って、農業者と日本の農業を守る=食料生産を守る=消費者の食料に対する安全安心を担保する、につなげることができれば生産者と消費者の分断もなくなると考えます。

 第6は、「主食米の需給バランスを確立する」ことです。米の消費は高齢化と少子化で今後も減少すると思われます。パン食をやめれば別ですが。需要と供給のバランスを崩したまま、飼料米の生産が伸びて需給が締まってきたといわれています。飼料米に対する補助金が長続きするとは思えません。飼料米(国産米)を食べさせて畜産をすれば自給率が上がるなどというのはまやかしです。

 主食用コメの需給バランスを確立することが必要です。戸別所得補償でなく、コメの需給関係を原則に経済活動として整合性のあるものにしなければならないと考えます。

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