|
|
配布の見直しを求める |
愛知・安城市議会議員 石川 翼 |
文部科学省は昨年10月、全国の学校に対し「小学生のための放射線副読本」「中学生・高校生のための放射線副読本」と題する副読本を送付しました。同副読本は福島第一原発の事故を契機に発行されたものであり、昨年配布されたのはその改訂版となります。
実はこの副読本、その内容の著しい偏りから、全国で問題視する向きが強まっています。
端的に言えば、放射線の影響を過小評価し、原発事故を矮小化する内容です。では、その具体的な内容に触れておきたいと思います。
例えば、「100ミリシーベルト以上の放射線を人体が受けた場合には、ガンになるリスクが上昇する」としつつも、その程度は「1・08倍であり、これは1日に110gしか野菜を食べなかったときのリスク(1・06倍)や塩分の高い食品を食べ続けたとき(1・11~1・15倍)と同じ程度」のリスクであるとしています。
また、「原爆からの放射線の影響を受けた人や放射線による小児がんの治療を受けた人から生まれた子供たちを対象とした調査においては、人が放射線を受けた影響が、その人の子供に伝わるという遺伝性影響を示す根拠はこれまで見つかっていません」との記載もあります。
遺伝については真逆の(つまり親の被曝が子に影響するという)調査結果もあります。行政的な言い回しに慣れた人であればともかく、一般的な小学生が下線部の表現を見れば「ない」と解釈してしまう恐れは多いにあります。
現場で異なる判断
こうした記載内容を問題視し、滋賀県野州市では既に副読本の回収が行われました。大阪府茨木市でも、副読本の配布を行わずに学校で保管することとしています。また、東京都小金井市議会では「放射線副読本の配布の見直しを求める意見書」が原案可決されています。
これらの動きも踏まえ、私は安城市における現状と認識を9月定例会で質問しました。市の答えを要約すると、以下のようなものでした。
「市内小中学校29校中、26校で全校生徒に配布した。福島第一原発事故で被害を受けた学校との交流があり、原発事故が結果として節電への意識を高めたような記述があったことが気になって全く配布しなかった学校が1校あった」「配布した学校の内、9校は総合学習や道徳の授業で利用実績がある」「副読本全体で考えると、『放射線』『放射能』といった、それまで義務教育で扱われてこなかった内容を子どもにわかりやすく解説しており、その危険性と対処方法等も具体的に示されている。『風評被害や差別、いじめ』という項目もあり、道徳的な資料として活用できる部分もある。総合的に考え、一概に『不適切であり、回収すべきである』とは考えていない」「副読本の内容について、特に懸念があるとは思っていない」といわゆるゼロ回答です。
総合的に勘案して回収は行わないにしても、その中身について一定の懸念程度は示されるものと思っていましたが、それすらありませんでした。また、こうした意思決定が事務方によってなされ、教育委員会の定例会に諮られることもなく見解が固められたプロセスにも問題を感じます。
折しも、文科省は次年度入学生徒数を各地の教育委員会に問い合わせ、新入生分の副読本を全国の学校に送付しようとしています。
安城市と同様の問題が全国で起きています。いち早く対応に乗り出した自治体もある一方で、本件が何ら議題にも上がっていない自治体も少なからずあります。小学生版、中学生・高校生版のいずれも文科省のHPで閲覧が可能です。全国の仲間の対応をお願いします。
|
|
|
|