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2019.01.22
新局面の辺野古 我々はどう闘う (下)
西日本から土砂搬出 本土側が責任持つ課題
 

 玉城デニー知事の誕生時点で、恐らく政府は辺野古新基地建設の強行突破を決意したはず。沖縄県による工事中止の行政指導も無視し、12月14日以来土砂投入を続けている。

 沖縄の民意を諦めさせるとともに、佐喜真淳を支持した30万票余の陣営へアメを注ぎ込むことで、玉城知事の権限を無力化する。政府の有無を言わさぬ強行の中で今年前半の沖縄は、2月24日の県民投票、衆院3区の補欠選挙、7月の参院選を闘うことになる。

 辺野古工事をストップさせ、安倍政権によるこれ以上の沖縄への介入と凶行を許さない、それはとりわけ全国の運動圏にある人たちに課せられた焦眉の課題である。

国外にも広がる批判
 美ら海への土砂投入の映像は、これまで情報の少なかった本土側の人々に大きな衝撃を与え、世論調査では土砂投入反対の声が賛成を大きく上回った。また、米ホワイトハウス宛てのネット署名が1カ月で20万筆を超えるなど、批判は国外にも広がっている。

 今回、土砂投入されている2?1工区は、全体の埋立面積で4%、土砂の量では全体の0・7%弱に当たる。浅瀬のため原状回復も不可能ではないとも指摘されている。 

 前号で書いたように、政府がいくら強行しようとも、軟弱地盤も活断層も飛行場設置基準違反もその現実が消えてなくなることは決してない。玉城知事がその権限を正当に行使できる体制が維持される限り、新基地工事は頓挫せざるを得ない。

示されない「具体策」
 今後の工事の中で焦点になるのが、本土側から搬出される埋立土砂問題である。今後、知事による「埋立承認の再撤回」があるとすれば、その理由を構成する問題だ。 

 まず特定外来種侵入対策である。西日本搬出地では、アルゼンチンアリ、ヒアリ、ハイイロゴケグモなどの生息やオオキンケイギクの植生が確認されている。沖縄県は外来種対策で全国初の土砂条例を制定、届出や立入調査など規制を設けている。防衛省は「供給業者に所要の調査を義務づける等、適切な対応をとる」としてきたが、県内産土砂の投入が開始された今日に至っても具体策は示されないままだ。

示せない外来種対策
 先行事案の那覇第二滑走路埋立は石材による埋立だったため、洗浄による外来種対策がとられた。辺野古の場合は、岩ズリと呼ばれる小石と泥の混合物による埋立で、洗浄すればほとんど流れ去ってしまうため、この方法はとれない。外来種対策も明示できないままの土砂投入など、論外と言わねばならない。

 加えて、辺野古埋立は全く生態系の異なる温帯域の本土から、亜熱帯域の沖縄への大量の土砂移動である。環境問題への国際社会の取組みは、生物多様性条約につながり、2010年に名古屋で開かれた第10回締約国会議では、「生物多様性戦略計画(愛知目標)」が採択され、その中で、各国は20年までに少なくとも海域の10%を海洋保護区として保全するとされている。日本政府は、この愛知目標の具体化として、12年9月に「生物多様性国家戦略」を閣議決定しているが、辺野古埋立は、政府が自ら定めた「生物多様性国家戦略」に反する行為と言わねばならない。

土砂搬出反対全国協
 西日本からの土砂搬出は、「本土」側が責任を持つべき課題だ。すでに西日本の各搬出地では反対運動が立ち上がり、「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」として連携した運動を進めている。それは、沖縄の反基地闘争と本土の環境団体の運動が一体となる、辺野古新基地闘争の新たな広がりを生み出すことになるだろう。

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