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  4. 2019.05.07

統一自治体選挙
こう闘った 東京・大田区長選      《2》
現職への批判票が二分〜ポピュリストに予想外の票〜

 東京・大田区長選挙は、好条件の下で闘われた。
 候補者の神田順氏(東大名誉教授、建築基本法制定準備会会長)は大田区育ちで、経歴・人柄ともに申し分ない人物。選挙母体の「オール大田の会」は、市民と立憲民主、共産、社民、自由、新社会、ネットなど戦争法反対運動以来の共同の積み上げに立って一丸で闘った。対する現区長の松原忠義氏は、自ら制定した区長多選禁止条例を破っての4期目挑戦で不評だった。

得票は3番目で敗北
 松原区政は「蒲蒲線」という区民に何の利益にならない新線計画や、羽田飛行場跡地の開発(大企業先端技術開発に提供)などに区予算から数百億円を用意し、他方で介護や保育、環境などは他区に大きく後れを取った。

 神田陣営は「大型プロジェクトから暮らし優先の区政へ」の転換を訴え、菅直人元首相をはじめ大勢の国会議員も応援に入った。15人の区議候補も神田候補と一体で闘った。

 しかし結果は、神田5万4986票、松原13万5930票、岡高志5万6778票。共産党推薦候補と争った前回は74%を得た松原票は53%に減った。しかし、11万余の松原批判票は神田と岡に二分されてしまった。

 岡氏は、どの党・会派も応援せずに単独の運動だった。整合性ある政策は全くなく、「住民税20%減税」「最低賃金時給1500円」の2つのスローガンを訴えただけ。どの陣営も、岡氏の得票は予想できなかったようだ。

 東京の各区では、福祉削減や民営化推進で巨額の「貯金」を貯め、大資本のために投資する傾向が強まっている。非松原の2候補は共に「大田区の多額の貯金」を問題にした。神田氏は、「巨額の貯金」を介護や保育などに回せと求め、岡氏は「区民に返せ」と訴えた。

錯覚に陥った有権者
 住民税減税は一定の所得がある層だけ(大田区では5割強)に利益があるが、子育て世代や高齢層の多くにとっては保育・介護の拡充財源が減るだけで、何の利益もない。

 それでも、税金が戻ってくると錯覚に陥った有権者もいたようだ。区だけで最賃を決めることなどできないが、40代という若さもあり、岡氏は若者を引き付けたのだろう。

 「オール大田の会」はこう声明した。「松原区政への批判は、雇用も育児も老後も問題を抱えている大勢の区民に共通のものであるにもかかわらず、その皆さんになぜ私たちの訴えが十分には届かないのか反省しなければなりません」。この反省の姿勢は大事だ。

11位以上当選が6人
 一方、定数50の区議選では、松原区政批判の先頭にたち神田候補擁立の推進力となった現職の奈須りえさんが1万901票でトップ当選しことは注目される。また、立憲の新人2人を含めて上位11位までに神田陣営が6名を占めるなど、前進の芽もある。

 北海道知事選、大阪府知事・大阪市長選、衆院大阪12区の補選などをみれば、「野党共闘」だけでは無党派層を引きつけられなくなっていることが分る。野党全体が総括してグレードアップし、拡大する右翼ポピュリズムから民衆を取り戻さなくてはならない。




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