政権発足後わずか7カ月の1月14日、早くも第2次の菅改造内閣が発足した。17閣僚中、外務、防衛を中心に11人が留任する「居ながら内閣」だが、政界ワンフレーズレッテル貼りを借用すると、「崖っぷち内閣」(江田五月法相)がもっともふさわしい。
自らのリーダーシップの欠如と小沢切りを巡る内紛によって民主党内に自信喪失病が蝕むなか、菅首相は24日から始まった第177回通常国会に政権の延命を日本の危機突破≠ノダブらせて臨むことになった。
内閣支持率がどんどん下がっている。政権発足時の昨年6月時点で64%あったが、12月には21%にまで落ち込んだ。今回の改造によって26%に持ち直した(朝日調査)といっても、自民党一党支配の時代ならとうに死に体だ。
それでも意に介しないのは将来の政界再編・大連立を折り込み、危機突破へオールジャパン体制を想定しているからだろう。
内閣改造のキーマンはむろん経済財政・社会保障と税制改革担当相に新任した与謝野馨氏。氏はもともと大連立論者であり、また、その肩書きが示しているように、危機突破へ最優先課題と位置づけられた「消費税増税による社会保障改革」の原理主義者。財務省人脈の切り札といってよい。
年金制度をめぐる社会保険方式か税方式かの議論は、国民の消費税アレルギーを解消するための入り口議論にすぎない。
菅首相は「過去20年間先送りされてきた課題に取り組む」ことを表明した。旧政権に遡った課題では、自民党も反対できない。その課題実現へ、菅改造内閣に取り込まれた与謝野氏への自民党側からの風当たりは強いが、嫉妬と羨望の複雑な思惑をはらんだ風だ。
さて、14日に閣議決定された基本方針は、「平成の開国」をうたい、貿易自由化と農業の再生、経済・財政・社会保障の一体立て直し、中央集権体制からの脱却を目指して一括交付金制度の拡充、地域主権改革など7項目を掲げた。
9カ国が交渉中のTPP (環太平洋経済連携協定)に参加し、代償となる農業の再生基本方針を6月中にまとめる。消費税増税は2013年の参院選が目途だ。中央集権体制の見直しの裏には、道州制の導入プランが控えている。
基本方針は政権交代の原点に返り、「政治主導」「官邸主導」を誓った。だが、張りぼてとなったあとの繰り言だ。菅政権は「最大不幸社会」へ突き進もうとしている。
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