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2011年2月15日
アラブ騒乱
民主化求め民衆蜂起  脱米欧の新時代へ / 反グローバル
 
  北アフリカから地中海東岸地域一帯のアラブ世界に地殻変動が起きている。同地域は近代以降、欧米列強の植民地であった。

 大戦後に独立を勝ち取ったとはいえ、旧宗主国の政治的経済的影響には公然たるものがある。昨年12月にチュニジアに発し、アラブ諸国に引火した騒乱は「脱戦後」を歴史に刻む民衆蜂起だ。


YouTube─エジプト反政府デモ、「100万人の行進」
 1月24日に始まった民衆デモは、ムバラクの9月大統領選への不出馬声明を引き出した。これを機に世界の関心はポスト・ムバラクに移った。だが、権力の行方は「脱米欧」を軸に混沌としている。

 1981年の大統領就任以来30年間、エジプトを非常事態下に置き強権支配してきたムバラク。任期切れまでの7カ月間に「平和的な権力の移行」に執着。内閣総辞職、スレイマン国家情報庁長官の副大統領任命、次男ガマルの与党・国民民主党(NDP)政策委員長辞任、政財癒着の象徴でNDP幹事、鉄鋼王のアフマド・エズの離党、さらにムハマド自身のNDP党首辞任と譲歩を重ねてきたが、国内最大野党勢力のムスリム同胞団が求める即時退陣には拒否を貫いている。

 ムバラク政権は中東における米国の代理人で、イスラエル対アラブの均衡で成り立つ中東和平政策の要。そしてムバラク政権にとって米国は政権の命綱だ。

 米国は年間15億5000万ドルの援助を行ってきた。その米国とEU27カ国は「新政権への秩序ある移行」で一致。追い詰められたムバラクは、オバマ米大統領に「あなたはエジプトの文化を理解していない、私がやめたらどうなるかも理解していない」と反撃した。

 米国の下工作を受けて、スレイマン副大統領は2月6日、野党勢力と対話し、@ムバラクは次期大統領選に出馬しない、A憲法改正委員会を設置する、B非常事態令を解除するなどで暫定合意した。だが、ムスリム同胞団は即時退陣を再確認し、抗議デモを継続している。

 ムスリム同胞団を親米の新政権に取り込みたい米国は、スレイマン暫定政権に期待をつなぎ、ムバラク即時退陣には慎重だ。

 チュニジアで失業中の青年が焼身自殺したことから始まった反専制・民主化蜂起。ヨルダン、サウジアラビア、イエメン、シリア、アルジェリア、モロッコに飛び火し、イスラエルは軍備増強に踏み出した。

 今回のアラブ民衆蜂起は、イラク・アフガニスタン戦争に至る米欧の中東政策の破綻と米国発グローバリズム破綻の結節点に発生した。



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