|
|
|
2011年3月8日 |
|
 |
|
|
|
冤罪をなくすには |
|
|
取調べ全面可視化が必須だ |
|
|
|
|
|
|
「こら、おまえ、警察をなめとったらあかんぞ。人生めちゃめちゃにしたるわ」。大阪府警東署の警部補の罵声だ。遺失物横領事件で任意の取調べを受けた男性が、密室で録音した。自白の強要が今なお続いている。取調べの全面可視化が絶対必要だ。
男性によれば、言葉の暴力だけでなく、イスを蹴ったり、肩を押えつけたりする暴力もあったという。この取調べは昨年9月3日、車の中や府警東署の取調べ室で行われた。しかも、黙秘権を告知されることもなく行われたのである。
男性は10月、大阪地検に特別公務員暴行陵虐罪などで告訴したが、地検は12月、脅迫罪だけで略式起訴とした。大阪簡易裁判所は、「略式起訴不当」と判断した上で1月に審理を大阪地裁に移した。
その初公判が先月21日に行われ、罪状認否で被告の警部補は、「間違いありません」と起訴内容を認めた。
身内をかばう検察
府警東署の警部補が起こした事件のここまでの流れで、問題を2点指摘できる。一つは言うまでもなく、密室で行われる取調べのひどさ、人権もなにもあったものでない警察官の姿勢である。密室の取調べが、冤罪の温床になっていることを浮彫りにしている。
もう一つは、男性が特別公務員暴行陵虐罪で告訴したのに、検察は脅迫罪で略式起訴にしたということだ。つまり、検察は密室で自白を強要する捜査手法が公開の場で裁かれることを恐れて、裁判を避けたのである。
裁判所が、身内をかばう検察の姿勢を認めなかったのは当然だ。郵便割引制度をめぐる不正事件で、厚生労働省の元局長に対する逮捕、起訴の過程で起きた検察の証拠改ざん事件などもあり、検察の判断を追認する傾向のあった裁判所に変化の兆しがあるとするなら、結構なことだ。
こうした検察や裁判所の問題は問題として置くとして、府警東署の密室で起きた事件が明るみに出たのは、容疑をかけられた男性がたまたまICレコーダーを持っており、取調べを録音して、自白の強要が行われたことを証明できたからだ。
そうでなければ、男性が「暴言・暴行を受けた」といくら言っても、警察の側が、「そんなことはなかった」と主張すれば、水掛け論で終わりになる可能性が高かっただろう。
任意の取調べでも
「虚偽の自白」の強要による冤罪を防ぐには、取調べを全面的に録画録音し、取調べの全過程を可視化することを法制化することが絶対に必要である。だが、現在検討されている可視化は逮捕後の取調べであり、府警東署が男性に行ったような任意の取調べは対象になっていない。
府警東署では、任意捜査で「暴言・暴行による自白強要」が行われたのである。捜査機関は男性を「被疑者」として取り調べ、自白を強要したのであるから、任意であろうと、逮捕・拘留されていようと同じだ。
捜査機関が、ある人物を特定して罪を犯したと疑い、捜査の対象として取調べを行うのであれば、推定無罪を前提として「被疑者」の人権が守られなければならない。取調べの全過程可視化(録画・録音)は必須である。
|
|
|
|
|
|