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 新社会党
2011年6月21日

  個人の上に国家
    行き着く先はファシズム



 「日の丸・君が代」をめぐって最近、3つの大きな出来事があった。最高裁の2つの判決と大阪府の「起立条例」だ。3つは、思想信条・内心の自由を保障する憲法を真っ向から否定する。個人の尊厳の上に国家を置く思想の先には、ファシズムがある。


 最高裁判決は、5月30日と6月6日にいずれも小法廷であった。

 石原都政下の都教育委員会が2003年10月23日、全都立学校に向けて出した「学校行事での国歌斉唱時に教職員らが国旗に向かって起立し、国歌を斉唱するよう徹底することを命じ、従わないものは処分する」との通達をめぐる判断である。

 裁判は、国歌斉唱時に校長の職務命令に従わなかった先生たちが、定年退職後の再雇用を拒否されたことは憲法に違反すると起こしていたもので、最高裁は30日の判決で1人、6日の判決で13名の上告を棄却した。判決は、職務命令を合憲とする不当なものだ。

 
人権規定を画餅に

先生たちは、個人としての歴史や人生観、教育観に基づき、「日の丸・君が代」が軍国主義・侵略戦争の精神的支柱となったことから受け入れることはできないとし、また教育の現場に強制はなじまないと職務命令に従わなかったのである。

 「10・23通達」をめぐっては多数の訴訟が係争中であるが、最高裁判決は、07年の「ピアノ事件判決」を含めこれで3件になった。いずれも不当判決であり、最高裁が憲法の番人としての役割を放棄し、憲法の人権規定を画餅に帰していることに対し、強い憤りと遺憾の意を表明する。

 ただ、6日の判決で弁護士出身の宮川光治裁判官が、職務命令を合憲とする多数意見に対し、「10・23通達」の行き過ぎを指弾したことは評価したい。

 宮川意見は、「日の丸・君が代が戦前の軍国主義に役割を果たしたという教職員の歴史観を否定し、不利益処分によって、その歴史観に反する行為を強制しようとした」と指摘、「職務命令以外の代替手段はなかったかを改めて検討すべき」と二審判決を破棄し、差し戻しが相当とした。

 
見過ごせない事態

 大阪の公立学校の行事で、「君が代」斉唱時に教職員に起立斉唱を義務付ける全国で初めての「条例」は、橋下徹知事率いる「大阪維新の会」が議員提案し、2日の委員会、3日の本会議とわずか2日間の審議で可決、成立した。

 起立条例は、他に府立学校を含む府の施設で「日の丸」の常時掲揚を定めている。

 また、3日の本会議は「起立条例」に加えて「維新の会」提案の議員定数を109から88に削減する条例改正案、大阪府・市再編を論議する「大都市制度検討協議会」の設置条例案の扱いをめぐっても紛糾した。

 橋下知事は、「君が代」の起立・斉唱は「社会常識・ルール。思想・良心の自由と関係ない」と主張し、9月議会で「3回不起立で懲戒免職」というとんでもない教職員処分条例まで成立させよう目論んでいる。不起立教職員の実名公表も検討しているという。

 「日の丸・君が代」などを巡って進行する、こうした事態を見過ごせばどうなるかは、歴史が教えている。





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