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 新社会党
2011年8月23日

  11年版防衛白書
    対中国「動的防衛」態勢を推進


 防衛省は8月2日、11年版「日本の防衛」(防衛白書)を発表した。これは日本の防衛の思想、戦略、装備体系などを網羅したもので、体裁は防衛体制の「透明化」だが、実質はフルカラー・570頁もの「防衛省・自衛隊の宣伝物」にほかならない。

 11年版白書の表紙に「防衛省・自衛隊」とある。自衛隊が発行主体として登場したのは初めてで、自衛隊「格上げ」工作の一環だ。

 冒頭の特集「東日本大震災への対応」には22頁も割いて自衛隊員の活動を紹介。「トモダチ作戦」の米軍への感謝を強調し、大震災も「存在価値ある自衛隊と日米同盟」の格好の宣伝機会として利用する。

 自衛隊員の現地活動に困難と苦労が大きかったことは否定しないが、防衛省・自衛隊こそ、日本に本来必要な「専門的かつ大規模な災害救助組織」の創設を一貫して拒否・妨害してきたのである。

 
“中国脅威”を強調

 今年の「国際社会の課題」では、大量破壊兵器や国際テロ、地域紛争よりも、「サイバー空間」の安全保障がトップに躍り出た。

 その脅威情報の提供者は米軍などで、米が「軍事を含むあらゆる手段を行使する権利を留保」し、「ネットワーク防衛の交戦規定の策定」に動いていると強調。実際は、中国、北朝鮮などに対する新たな作戦分野なのである。

 大量破壊兵器の項では、巡航ミサイル(CM)の脅威が説かれているが、これは米軍などの前方展開部隊への脅威として、特にアジアにおいては中国の最近のCM開発が焦点。

 白書は、中国分析に最大の20頁を割き、兵力増強や海洋進出について詳述、西沙・南沙諸島をめぐる紛争(5ヵ国が関係)にも及んでいる。尖閣を含む東シナ海や南シナ海の諸島の領有権問題が石油・天然ガスなどの利権に直結するからだ。

 北方4島や独島(竹島)も含め、これらの領有権争いは武力では解決できず、互譲・互恵の政治的解決しかないが、すべての当事国が「固有の領土」に固執。白書は米の「国家軍事戦略」を援用し、中国を「高圧的とも指摘される対応」と批判し、中国は反発。

 米国は、この問題では「中立」を装うが、「洗練された武器などを有する国家が、米軍部隊の展開を阻害する可能性がある」とし、「航海の自由」を楯に中国を牽制している。

 
中国封じ込め態勢へ

 防衛省・自衛隊は、「動的防衛力」を掲げて米の太平洋戦略を支える「南西防衛」戦略にシフトしつつある。

 具体的には、昨年暮れに策定の「防衛大綱」と「新中期防」にあるように、沖縄本島を中心に宮古、石垣、西表、与那国などに、戦闘機部隊の増強、新型レーダーの設置、沿岸監視・初動対応部隊の配置、水艦の増強、護衛艦の機動運用、PAC3基地の設置などの方針を打ち出している。

 その名目は「島嶼防衛」だが、目的は中国の軍事的展開を軍事的に牽制し、封じ込めることにある。それに対抗して中国は、さらに兵力増強を図り、日米は、それを理由にさらに軍事一体化を進める――この悪循環からは平和も安全も実現しない。それは別の回路からしか生まれない。





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