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2011年11月1日 |
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「秘密保全」法制 |
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「知る権利」否定を許すな |
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読者にはかつて中曽根内閣の時代、「スパイ防止法案」を廃案にした闘いに参加した方も多いことだろう。その闘いが今、再び必要になろうとしている。国民の知る権利と報道の自由を侵害する「秘密保全法案」が次の通常国会提出されようとしている。
野田内閣は10月7日、「情報保全に関する検討委員会」(委員長=藤村修官房長官)を開いて、外交や治安などに関する国家機密を公務員が漏えいした場合の罰則強化を柱とする「秘密保全法制」(仮称)を来年1月に開会する通常国会に提出するため、法案作りを開始した。
同法案の柱は、 防衛など「国の安全」、 外交、 公共の安全・秩序の維持の3分野を対象に、「国の存立に重要な情報」について担当大臣が新たに「特別秘密」と指定するというもの。
昨年11月8日、仙谷由人官房長官(当時)は衆院予算委で中国漁船衝突事件の映像流出問題について、「国家公務員法の守秘義務違反罰則は軽く、抑止力が十分ではない。秘密保全に関する法制の在り方について早急に検討したい」と強調、検討委員会を立ち上げる考えを示した。
厳罰化を抑止力に
この方針に基づいて設置された「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が8月に報告書を提出、それに沿って法案作りが行われている。
報告によれば、特別秘密を取り扱う公務員が故意に漏えいした場合の罰則について、最高で懲役5年か10年とする方向。国家公務員法の守秘義務違反の懲役は1年以下であり、厳罰による抑止効果を狙っている。
また、特別秘密を取り扱う職員について私生活や外国への渡航歴、懲戒処分歴などを調査する「適正評価」を行い、配偶者も対象になる。さらに国家公務員ばかりでなく、事業委託を受けた独立行政法人や民間事業者まで適用対象の内容だ。
防衛分野では、すでに01年の自衛隊法改正で特に重要な秘密を「防衛秘密」にし、漏らしたときの罰則を強化している。これによって08年には、航空自衛隊一佐が読売新聞記者に機密情報を漏えいしたとして懲戒免職になっている。
「防衛秘密」は、1985年に廃案になった「国家秘密法(通称=スパイ防止法)」に盛り込まれたものと同じ。また、日米政府は07年に米軍の情報を守るため「秘密軍事情報保護協定」を結んでおり、秘密保全法制定の背景になっている。
スパイ防止法案は、中曽根内閣のときに自民党による議員立法として国会提出されたが、野党第一党の日本社会党(当時)を中心とした徹底した審議拒否と国民世論の強い反対によって廃案となった。スパイ防止法には世論の反発が強く、中曽根内閣は政府提出法案にできず、議員立法で国会提出した。
情報公開が公約だ
民主党政権は、国民の「知る権利」を明記した情報公開法改正案を国会に提出している。情報公開の拡大は、民主党の政権公約(マニフェスト)だ。まずは、たなざらしにされている情報公開法改正案を早急に成立させるべきだ。「秘密保全法」制定は国民との約束に反し、逆行する。
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