朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が9月9日に行った5回目の地下核実験に対し、国際社会は国連決議で「制裁」を課す。米国は朝鮮に対し、軍事力による「三段階戦略」を発動し、朝鮮半島は一触即発の危機的状況を迎えている。
5回目の実験は従来に比べ規模が大きく、ミサイルに積載できる核弾頭の実験といわれる。8月24日には潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行い、朝鮮は核兵器保有国になろうとしている。米国はじめ国際世論はこれを厳しく非難し、制裁をより強める動きだ。 だが、これまで国連決議や制裁も朝鮮の核開発は止められずに今日に至る。米韓両国は経済的制裁から軍事的制裁へと向かっている。米国は三段階戦略を発動し、第一段階のBI戦略爆撃機や空母を朝鮮半島周辺に展開し、次の第二段階では、朝鮮の核使用が切迫していると判断すれば先制核攻撃する。朝鮮半島はかつてない軍事的緊張にある。
道理のない外交
こうした危機的状況を何としても打開しなければならない。平和国家を自認する日本にその役割が求められる。だが、安倍晋三首相は「新たな段階の脅威」とし、各国に制裁を強める国連決議の根回しをしている。しかも、1998年の核実験を経て核保有国となり、核拡散防止条約(NPT)に未加盟のパキスタンに制裁の協力を要請するなど、道理のない外交に走っている。
日本がなすべきは「制裁」一辺倒ではなく、「日朝平壌宣言」「ストックホルム合意」の履行の努力だ。そのために、拉致問題の解決を含め朝鮮との対話をするための具体策の検討だ。
国際社会は、朝鮮半島問題の本質に立った解決の方向に向かうべきである。そのカギを握るのは米国だ。朝鮮半島は、未だ朝鮮戦争の休戦状態にある。休戦協定は外国軍隊の撤退と平和的解決の努力を求めたが、米韓は履行せずにきた。
国際社会は米国主導の朝鮮敵視政策を根本的に転換することを要求すべきだ。朝鮮の核開発と核保有は制裁だけでは解決できない。軍事力一辺倒では再び戦争の危機を招く。米国は事態打開へ対話の窓口を開くべきだ。
核抑止論を捨て
核開発・核兵器を世界から一掃すべきである。そのための国際会議が開かれてきたが、核大国は冷ややかだ。15年の核拡散防止会議は大国の意向で合意できなかった。朝鮮の動きを受けて韓国では独自の核武装論も台頭してきている。この現実から脱却するには、核による「抑止論」を捨てることだ。そのために核大国で構成する安保常任理事国は率先すべきだ。
日本は米国の核に依存し、原発輸出や再稼働政策を進めているが、ヒロシマ・ナガサキ・フクシマの経験、その反省と教訓を積極的平和外交として展開し、いたずらに軍事的緊張を煽る「戦争法」は廃止すべきである。
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