安倍内閣は11月15日、南スーダンPKOに派遣する自衛隊に「駆け付け警護」などの新任務を付与した。内戦が続く国への自衛隊派遣は、憲法にもPKO5原則にも反するが、武力行使は自衛隊員が殺し殺される危険をもたらす。
閣議とNSCは、陸自部隊410人と海空自部隊各170人を南スーダンに派遣し、「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」という武力行使を容認する任務を付与した。昨年、国際平和協力法に盛り込まれた武力行使任務を初めて発動したもの。
現地では内戦続く
南スーダンでは、石油利権などを巡り政府軍・大統領派と前副大統領派の戦闘が各地で続き、7月には首都ジュバで戦車やヘリも投入した激戦で300人もの死者が出た。その後も「一週間に少なくも60人が死亡」(政府軍発表)など武力衝突が頻発している。 国連PKOは、停戦合意による武力紛争の停止を前提に、停戦合意の順守を監視し、本格的な和平に導くのが目的だ。
その大前提が崩壊したなら、PKOは中断・撤収すべきだ。まして憲法9条を持つ日本は、PKO5原則を厳格に守るなら自衛隊の撤収を考えるべきで、武力行使できる部隊を派遣するなど、重大な誤りである。
詭弁ばらまく政府
ところが安倍政権は、派兵の実績≠ニいう体裁を維持するため、自衛隊派遣を正当化する口実づくりにやっきだ。
まず、南スーダンには「紛争はない」と言う。2011年に同国が独立し、スーダンとの紛争が終わって紛争当事者もいなくなり、その同意は不要、と驚くべき勝手な論理だ。
7月の交戦は「戦闘ではなく衝突」、「反政府派は組織的、系統的でなく、支配地域の確立もないので紛争当事者とは考えない」と言う。PKO法にはそんな定義などない。ゲリラ戦はもともと「系統的」ではなく、「確定的な支配地域」もない。
また、7月の戦闘中、政府軍とPKO部隊が交戦したと双方が確認している。NGOを襲撃し、職員を虐殺したのは政府軍だった。政府軍による住民の虐殺、略奪、レイプ、放火などの報告は多い。
では、駆け付け警護で国連職員やNGOを救援と言うなら自衛隊は政府軍に武器を向けるのか? 政府の答えは、「南スーダン政府は自衛隊の活動に同意しており」「住民やNGOを襲っているのは政府の統制を外れた一部の集団と思われるので、政府軍と対峙することはない」。こんな詭弁は紛争現場では通用しない。
政府は、「活動範囲は(政府軍が支配的な)ジュバ周辺に限定」とか「他国の軍人の救援は想定していない」「有意義な活動の実施が困難な場合は撤収」などと留保条件を付けたが、自衛隊員が殺し殺される可能性は現にある。無責任な政府に命をもて遊ばせてはならない。
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