廃炉を決めた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」に代えて、政府は官民合同の「高速炉開発会議」で、新たな高速炉を国内で建設するための工程表作りを決めた。この開発計画を作ることで、核燃料サイクルを延命させようとする。
「もんじゅ」は廃炉にする以外にないことは、本紙10月11日号でも示されている通りである。さすがの政府も廃炉の方針を出さざるを得なかった。これに対して地元の福井県や敦賀市や、関係する青森県などから強い懸念の声が上がり、経産省や文科省などへの陳情となった。
原子力マフィアによって地方がいかに重い麻薬中毒におかされているかが改めて表面化した。他方ではトランプ大統領の出現によって、安倍首相は自前の核武装に現実性が生まれたと感じている。
そこで政府は「もんじゅ」に代わる新たな高速炉を国内で建設する方針を決め、その工程表を18年中に示すことにした。ここでの主役は電力資本ではなく、重工や電機資本である。電力会社にとって使用済み核燃料は、自分の敷地から外に持ち出すだけでよい。再処理工場は稼働しなくてよい。
むしろ稼働して、これ以上プルトニウムが抽出・返還されない方がよい。ましてプルトニウムが増殖されて、ウランより危険性も価格も高い燃料を大量に使わねばならなくなるのはいい迷惑である。
新高速炉は周囲(ブランケット)にウランを置かないから、プルトニウムの増殖はないとしている。核廃棄物中の半減期の長い核種を燃やし処分期間の短縮につなげる可能性も追求できるとする。
しかし第一に、当初にウランは充填しないとしても、プルトニウムの増殖を可能にする設備をつけた設計は容易にできる。第二に、液体ナトリウムを冷却材に使うために、危険性は少しも軽減されない。第三に、増殖なしの高速炉では、むやみにコストが高くなるだけで、発電炉としては、まったく無意味である。
核廃棄物の処分期間短縮がもし成功したとしても、技術的に可能というだけで、これも極めて高価につく。第四に、出力28万キロワットの「もんじゅ」で建設費等が1兆円を超えたのだから、フランスとの共同研究が想定される「アストリッド」の後に計画される実証炉や実用炉となると、新たな耐震基準による100万キロワット規模で数兆円の建設費となって、軽水炉の10倍にもなりそうだ。そのツケがどこに来るか言うまでもない。
こうして発電用としては危険すぎ、高価すぎて、民衆を犠牲にしての重工や電機など独占資本の目先の利潤拡大にしかならない。トランプ大統領に呼応して、軍事資本と安倍一族は高純度プルトニウム生産による核武装を、新高速炉開発に託する危険性も大きい。全ての原発も再処理工場も新高速炉計画も即時廃止する以外にない。
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