安倍首相は年頭所感で、「新たな国づくりを本格始動」と述べた。長期政権と改憲への決意と読める。手法は国民の不満を高めないこと。17年度予算案の特徴は、この手法に沿う財政出動と一時しのぎ政策、そして新重点の軍事費にある。
アベノミクス失敗
一般会計総額97兆4547億円は過去最大の当初予算で、16年度当初額を7329億円上回る。安倍政権の眼目は、国民の生活不満を政権批判にさせないこと。だが景気浮揚のテコと期待した日銀・異次元金融緩和が失敗し、16年度2次補正から財政出動頼みに舵を切った。
国債追加を2次補正で2兆7500億円、3次補正で1兆8526億円も計上し、17年度当初でも34兆4320億円に上る。「経済再生と財政健全化の両立を象徴する予算」─とは真っ赤な嘘だ。
一時しのぎに腐心
歳出では「一億総活躍社会の実現」や「働き方改革」を掲げ、保育士・介護人材等の処遇改善、返済不要「給付型奨学金」創設、非正規労働者の正社員転換や介護休業拡大等で企業助成などを並べた。だが保育士で月平均6000円賃金増額など全て中途半端。一時しのぎで抜本改革に程遠い。
一方、社会保障予算は自然増を概算要求からさらに1400億円削り、とくに高齢者の負担を増加させた。
3つの過去最大
対照的に、防衛省5兆1251億円、海上保安庁2106億円、スポーツ関連334億円と、過去最大予算が並ぶ。
▽防衛省分(狭義の軍事費)は5年連続増の5兆1251億円。「南西地域の島嶼防衛」「弾道ミサイル攻撃への対応」に加え、新重点として「技術優越の確保」「防衛生産・技術基盤の維持等」を掲げた。@無人化Aスマート化・ネットワーク化B高出力エネルギー技術等の研究を挙げ、水中無人機研究9億円などを計上。また大学・企業等の研究を軍事につなげる「安全保障技術研究推進制度」を昨年度6億円から110億円へ大増額した。これら軍事新動向に要注意だ。
▽海保分(広義の軍事費)は同庁設置以来の最大規模。しかも16年度2次補正で674億円、3次補正で30億円を組んだ。尖閣諸島配備の大型巡視船建造と要員増が反映し、中国とのチキンゲームに陥っている。
▽スポーツ増額はもちろん東京五輪・パラリンピックに向けたもの。選手強化と合わせ箱物の新ナショナルトレーニングセンター建設を進める。総工費220億円、16年度2次補正で24億600万円を計上、当初予算案額は36億円だ。
政権に対抗する柱
安倍政権に対抗する二本柱は、@憲法25?28条を活かす公的就業保障と普遍的社会福祉の実現であり、A〈非武装日本〉と〈東北アジアでの非戦・平和の多国間枠組み〉の一体的実現である。
憲法を今日に活かす年にしよう。
|