安倍首相は第193通常国会開会に伴う施政方針演説で、正月早々から口にしてきた「改憲」を呼びかけるなど暴走ぶりを見せつけている。憲法施行70年の記念すべき今年、我々は憲法を守り、生かす決意を改めて固め合い、闘うのみだ。
粉飾データで自賛
安倍首相は演説の冒頭に「世界の真ん中で輝く国創り」と内閣の方針を述べ、その基本は「日米同盟を基軸」とする「地球儀を俯瞰する外交」にあるとした。その上で名目GDPが9%成長、ベースアップが3年連続実現、子どもの相対的貧困率が2%減少など、我田引水のデータを羅列した。
ちなみに、このGDP9%成長率はあくまで名目であり、内閣府の16年11月の経済見通しでは17年度は実質1・0%に過ぎない。
また子どもの相対的貧困率が2%減少と自賛するが、14年の厚生労働白書は「子供の相対的貧困率」が過去最悪の16・3%、6人に1人、約325万人が「貧困」としている。安倍首相が自慢する「2%減少」は僅か6万5000人の減少でしかなく、恥ずべき数字であっても、決して胸を張れるものではない。
また、有効求人倍率が25年ぶりの高水準というが、これは卸売・小売や飲食業などのパート求人の伸び、福祉分野の不安定雇用と低賃金の慢性化による有効求人倍率が3・40倍など非正規への求人が押し上げているのであって、労働条件の向上が伴うものでないことを指摘しなくてはならない。3年連続のベアを含め、政府統計のマジックによるものである。
現代の治安維持法
では、安倍首相はどんな国創りを目ざすのか。破綻が露呈した「アベノミクス」への言及は影を潜め、「4000万人の観光立国」を強調する。また、「安全・安心の国創り」では20年オリンピック・パラリンピックに便乗して「テロなど組織犯罪への対策」と称して現代の治安維持法と言われる「共謀罪」新設法案の4度目の提出を目論む。共謀罪法案は国民の反対で3度廃案になった極め付きの悪法だ。
「一億総活躍社会」をぶち上げ、女性の活躍、保育、介護分野の待遇改善や、給付型奨学金に言及した。だが、中曽根政権を超えて長期となった政権の施策は遅々として進んでいない。それどころか、社会保障費の5000億円削減も自慢げに演説に織り込んだが、庶民への負担転嫁で乗り切ろうとする姿勢を許すことはできない。来年度予算で明らかに突出しているのが軍事費である。米軍駐留経費を含めて過去最高の5兆1685億円を計上。5年連続の増加で、16年度当初予算(5兆541億円)比で2・3%の増である。
総選挙で勝利して われわれの焦眉の課題は、安倍首相を退陣に追い込むことだ。野党は一致団結した国会内外の闘いを強め、秋に予想される総選挙で勝利しなくてはならない。
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