安倍晋三首相とトランプ大統領の首脳会談は、トランプ氏の数々の暴言にビビった安倍氏が「米国の成長と雇用創出」への貢献策を土産に歓心を買い、既存路線の再確認と問題の先送りに終わったが、今後の展開こそ要注意である。
首脳会談は、それぞれの国内で憲法も人権も無視して暴走する2人の会談だったが、トランプ流の「恐喝」商法に対し安倍氏は巨額の「経済協力策」でトランプ氏の機嫌をとり、表面上の結論を「日米同盟の再確認と経済協力」の枠組みに収めた。
その具体的な政策展開は今後に持ち越されたが、負担の多くは日本側に課せられることになり、安倍政権はそれをも自らの暴走政治に利用する構えだ。
同盟強化の大合唱
トランプ氏は選挙中、駐留米軍の費用負担の増大を要求、米軍撤退も示唆していた。米国の戦略と軍事体制では撤退など考えにくく、会談でもこの問題は出なかったが、米国の虎の威で中国包囲網を図る安倍氏は、既存の過大な基地負担に加え、軍事的な「役割・任務・能力の強化」を約束した。
米側からは、「核の傘」や尖閣を含む日本防衛、南シナ海での航行の自由、力による現状変更反対などだが、どれも既定路線の再確認で日本側に一層の軍事協力を要求し、それを日本政府が利用するという仕掛けが再び入れられた。その中で辺野古新基地建設の強行も確認されたが、沖縄県民の抵抗とその拡大を止めることはできない。 一方、大統領は首脳会談直前に習近平氏と電話で「一つの中国」と「米中協力」を確認。日本カードと中国カードを使い分ける構えで、首相が「日米同盟の強靭化」を自賛しても、この覇権体制を結ぶのは、あくまで利用主義の思惑だ。
米経済への貢献策
「米国第一」を叫ぶ大統領に安倍氏が持参したのは、4500億ドル(約51 兆円)の市場と70万人の雇用を創出という「日米成長雇用イニシアチブ」。
米北東部の高速鉄道などのインフラやアジアのLNG市場と米の天然ガス輸出市場の拡大、原発の共同売込み、ロボットや人工知能の開発、雇用と防衛の政策連携などが並ぶ。首相は日本企業に米国投資計画を要求、年金積立金も投入予定という。
ただ、それには日本の対米輸出も伴い米国の対外赤字の解消にどれだけつながるか未知数で、しかも貿易など具体的経済政策は、麻生・ペンス協議に先送り。
米のTPP撤退を受け、「アジア太平洋地域での自由で公正な貿易ルール」が謳われ、より厳しい対日要求が押し付けられる可能性は大だ。
* 入国禁止令も差止められ、排外主義を世界中から非難されるトランプ氏は、批判せず土産持参で称えてくれた安倍氏の歓待など安いもの。2人の暴走男が抱き合うおぞましい「蜜月芝居」だった。
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