17春闘は3月15、16の両日に大手の集中回答日を迎えたが、ベアが前年割れとなった。安倍政権の下で4回目を迎えた「官製春闘」はもろくも息切れした形だ。連合会長は「昨年と遜色ない」と評価するが、労働者にその実感はない。
今年の春闘の特徴は、働き方改革実現会議(実現会議)とリンクさせられて労働組合が縛りつけられたことだ。安倍首相は、11月16日の実現会議で、「少なくとも今年並みの賃上げ水準と4年連続のベア実施」を経営側に要請し、経営側は首相の意向を表向きは受け入れた。
労働側も、官製春闘で「4年連続のベア」に期待をかけたが、賃上げは闘い取るものという原則を置き去りにした。経営側の高笑い 経営側は、労働組合を自分たちの土俵に誘い込み、交渉重視・対話路線に引きずり込んだ。労使協議や職場懇談会を通じた労使対話は、従順を生みだす。闘う武器を捨てた労働組合は、無防備のままに「一発回答」に従うしかなくなった。経営側の高笑いが聞こえるようだ。 今春闘の連合のべア要求は、2%程度で昨年とほぼ同額。安倍首相が言ってきた「少なくとも今年並み」ならば、自動車、電機で1500円が勝敗の分かれ目になる。しかし、経営側の対応は甘くはなかった。
安倍首相は3月16日の日本商工会議所の挨拶で、4年連続のベアを評価しつつ「欲を言えばもう少し上げてほしかった」としゃあしゃあと言い放った。「月100時間」「実現会議」は17春闘を翻弄した。12月20日の実現会議では、「同一労働同一賃金」のガイドラインが提示され、春闘決戦段階の3月14日には長時間労働の是正問題が経営側の思惑通り「繁忙期の残業月100時間未満」で合意した。3月17日の実現会議では、下旬までに過労死ラインの80時間超をも認める「働き方改革」を合意した。 17春闘は、経営側が意図的に「働き方」問題を焦点にすることで拡散させ、労働組合の側は健康破壊につながる「長時間の残業労働」問題を春闘の課題にせざるをえなかった。
13年に始まった政労使会議では、トリクルダウン(富める者を富ませれば、滴が下に流れる)論によって、富裕層に利益を与えて経済の好循環を生むというまやかしが幅を利かせた。ところが、15年に1億円以上の金融資産を持つ富裕層の世帯数はアベノミクスが始まる前の11
年に比べ、40万世帯(50・2%)増え、その結果、日本の総資産の2割をわずか2%の富裕層が持つ結果となった。軒並みベアゼロ 自動車、電機が前年ベア割れした影響は大きく、私鉄、流通など第三次産業などが軒並みベアゼロに抑え込まれた。官製春闘で労働組合は個別交渉・交渉重視で闘わざるを得ず、最大の武器である「ストライキ」は夢物語になっている。
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