朝鮮半島では朝鮮戦争以来の緊張が高まっている。安倍首相はトランプ米大統領の「決意」を支持した。好戦的な支配者のターゲットは二つ。一つは敵国だが、もう一つは自国国民であり、その自由を制限し、洗脳し、統合することだ。
第二次朝鮮戦争の危機をリアルに眼前に突き付けられた日本社会は、異様な空気に包まれている。テレビや週刊誌は明日にも「北のミサイル」が飛来するような煽情的な情報を垂れ流している。何十万という民衆の命がかかっているのに、バーチャル空間のことのように語る。
日本は米国に軍事行動の停止を求めよという声は封じられ、逆に「日本も心構えが必要」とか「早く憲法を変えて普通の国に」と「識者」が誘導する。
94年危機で何が
朝鮮のNPT脱退宣言に始まる1994年危機も日本に衝撃を与えた。米国は寧辺の核施設の爆撃を計画し、細川→羽田と続く非自民連立政権に米軍への物資輸送、空港・港湾の利用、韓国からの米避難民支援など協力を求めてきた。政府部内で「K半島事態対処計画」が立案され、有事法制の検討が始まった。これらも一因となって社会党は閣外に去り非自民連立は崩壊した。
一方、金泳三韓国大統領は攻撃を思い止まるようクリントン米大統領を懸命に説得した。開戦3カ月で米軍5万人、韓国軍49万人、避難民数百万人が想定されたからだ。そしてカーター元大統領の訪朝と米朝枠組み合意で戦争は防がれた。
戦争法制を整備
20年後の今、事態は格段に悪化した。94年の「不備」を反省した政府は、96年日米新ガイドライン、98年周辺事態法、03年有事関連3法、そして15年戦争法と体制を整備した。
有事法は開戦を想定した段階でも発動し、羽田空港にも軍用機が出現するだろう。政府は朝鮮沖に向かう原子力空母艦隊に自衛隊艦船を合流させるという。戦争法は自衛隊の任務に米国艦船などの防護を定めており、リスクは南スーダンPKOの比ではない。
安倍政権は、軍事行動に踏み切る際の「事前協議」を米国に要請し、米国は応じた。日米安保条約では、事前協議なしに日本の基地から出撃できる「朝鮮有事密約」がある。安倍の面子を立てるだけだろう。自民党は「敵基地攻撃能力保有」を政府に提言した。共謀罪法は戦争反対運動を事前に取り締まるものになる。
「北の手先」と
94年危機は秘密裏アが「あわや米朝戦争だった」と報じるのは数年後。元米軍当事者による証言は02年になってからだ。世論の反発を恐れたのである。
しかし、今はどうだ。日米ともに新自由主義的な反動政権の下での危機である。メディアも戦争モードで煽り、街頭で平和を訴えれば「北の手先」と批判されそうな空気がつくられている。戦争反対の声を上げよう。
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