安倍晋三内閣は「戦後レジームからの脱却」を強調した時期があった。今日ではあまり公言しないようだが、これを捨て去ったわけではない。「教育勅語」の復活や「銃剣道」採用など、それを象徴する出来事が次々に起きている。
安倍内閣の19名の閣僚中15名が「日本会議」の会員だ。
また、「神道政治連盟国会議員懇談会」や「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」などを含めれば公明党の石井啓一国交相を除き、閣僚全員が関わっている。「日本会議」などの目的は皇室を中心とした戦前回帰の政治、社会だ。
そのために憲法改定と教育「改革」、「謝罪」外交からの脱却や国防の強化などを唱える。「森友学園」問題は、日本会議でお友達である籠池泰典氏と政治家を介した各省の官僚の「忖度」が底流にあることは誰も否定しないだろう。
3歳児から「勅語」
厚生労働省は2月に2018年度からの「保育所保育指針」改定案を公表した。その中で、3歳以上の幼児について、「行事において国旗に親しむ」「国歌、唱歌、わらべうた」などに親しむと記した。
まさに、お年寄りから3歳児まで、「国歌・国旗」を尊び、国旗を掲揚して君が代を斉唱する社会の強要だ。
また、2017年4月からの新学習指導要綱の中学校保健体育の「武道」に銃剣道が加わった。銃剣道で使うのは、軍事用の銃の先に短剣を装着し、敵軍との「白兵戦」に使うための武器だ。この武器を使った武術が銃剣道だ。日本の銃剣道連盟では、会員の9割が自衛隊関係者だというのも、「さもありなん」ということだろう。
だが、銃剣道は人を銃器で直接的に殺傷する目的のための武術であり、これを中学校の武道に加えるという。スポーツ庁が銃剣道を武道に加えた理由は、「パブリックコメント」だったと言う。
だが、各省庁が「パブリックコメント」自体を軽視し、市民から寄せられる正当な意見を無視するなか、銃剣道の採用を決めたのは、教育勅語や戦陣訓といった「軍事教育」的な意図を想起すべきだ。
草の根右翼と一体
さらに、安倍内閣は4月3日に質問趣意書に対する答弁書で教育勅語を道徳教材に活用できることを閣議決定した。教育勅語と日本国憲法は相容れず、1948年6月には衆参両院がこれを排除、失効を決議している。菅義偉官房長官は「憲法や教育基本法等に反しない限り」といった条件を付けるが、教育勅語を教材にすること自体が平和憲法の精神に反し、違憲なのである。「道徳的に良い面がある」とか屁理屈を並べたてるが、安倍内閣や各省庁官僚に道徳を語り、教育を語る資格はない。
これら安倍政権が作る一連の流れは、日本会議など“草の根右翼”運動と気脈を通じ、憲法9条改悪と戦前回帰のためのものだ。
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