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2017.05.23
「9条改憲と韓国選挙」
朝鮮危機を利用させない
 

 
 朝鮮有事が大々的にキャンペーンされ、世論が操作されている最中に、安倍首相は「2020年の9条改憲」を明言し、ルビコン川を渡った。一方、韓国の大統領選では、対北融和を主張する文在寅氏が勝った。何を意味するのだろうか。


 戦争を突きつけ


 1994年の朝鮮危機以降、格段に整備された戦争参加法制が今次朝鮮半島危機で動き始めた。
 まず戦争法に基づく米海軍補給艦への自衛隊による「武器等防護」の実施=米艦を武力で「防護」する任務だ。別に海自護衛艦が空母カール・ビンソンとの「共同訓練」を行った。緊張が高まれば「共同訓練」から「武器等防護」へと変わりかねない。
 「グレーゾーン」までは、国会の承認は不要で防衛相の判断で実施できる。国会で「防護」の内容を質されて安倍首相は答弁を拒否した。
 政府は4月21日に「ミサイル着弾」の危機対応を自治体に周知し、「国民保護ポータルサイト」に「対策」を流した。「国民保護法」の始動である。有事法制のACSA(米軍への弾薬・燃料の補給など)も改定されようとしている。
 94年危機と大きく違うのは、国民にあからさまに戦争を突きつけていることだ。テレビの扇情的報道はひどいが、何よりも最大の洗脳工作は安倍首相のパフォーマンスだ。
 2月10日のトランプ大統領との「北ミサイル」非難の共同会見、4月のペンス副大統領との会談、トランプ氏との電話協議等を受けて口にするのは「力による平和」である。
 肝心の内容は秘密にしたまま、「武力あっての平和」というデマゴギーを繰り返し擦り込もうとしている。この論理が9条の対極にあるのは言うまでもない。


 6万人の避難で


 こうしてついに5月3日の「2020年に9条改憲」という、慎重さも「お試し改憲」も投げ捨てる発言となった。安倍首相は今次朝鮮危機を最大限利用したいのだろう。
 しかし、安倍首相も発言のリスクは承知だ。朝鮮危機と9条改憲をつなげるようなことは口にしない。朝鮮人民の不幸を自国の軍事大国化に利用する本音を漏らせば、韓国から糾弾されることも分っている。
 4月中旬、韓国外交部は日本政府に「誤解を招き、半島の平和と安全に否定的な影響を与える発言は自制」せよと苦言を呈した。在留邦人6万人の避難計画では、自衛隊機や艦船は韓国が拒否反応を示すので、米軍に頼むというのだ。
 朝鮮戦争を体験した韓国民は、「平和ボケ」などしていない。戦争につながる挑発や世論は排除する。94年危機は当時の金泳三大統領がクリントン大統領を説得して回避された。金正恩氏と話し合うと宣言し、米軍の高々度迎撃ミサイル配備に異を唱える文氏が大勝した。
 退路を断ってしまった安倍氏も頭が痛いだろう。




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