「介護の社会化」を名目にして始まった公的介護保険制度は、「介護の自己責任化」をより鮮明にし、深化するとともに、ついに利用料3割負担のレールを敷いた。来年度からの第7期介護保険事業計画に反映される。まさに国家的詐欺だ。
その場しのぎの連続
地域包括ケアシステムの深化・推進と介護保険制度の持続可能性の確保を二本柱とした、「介護保険制度の改悪法」が5月26日成立した。
二本柱のうち、持続可能性の確保とは負担増と利用制限であることは自明だ。耳触りの良い地域包括ケアシステムの深化・推進も期待感を持たせるが、前回の改悪でも軽度者の介護支援は自治体の事務に移す保険外しが行われた。それをいっそう推進するということだ。
公的責任を自助と共助の世界に振り替えようとするものであり、介護度を下げた自治体には財源を与えるご褒美も仕組んだ。介護判定が厳しくなるのが容易に想定できる。
高齢社会に備えてと銘打って89年に消費税を導入し、97年には5%に増税した。その後批判が強い消費税増税による高齢社会対応は得策ではないと考えた政府は、保険制度で介護の社会化を目指す。それが公的介護保険制度だ。
保険あって介護なし
新社会党は当時、「保険あって介護なし」を予測して税による制度化を求め、法案に反対した。
65歳以上の月額保険料は導入時の全国平均2911円から15年間で現在5514円と、1・9倍に増えた。消費税は法人税や高所得者層の減税の肩代わりにされ、「税と社会保障の一体改革」も負担増と消費税増税のテコにされた。
他方、施設待機者は減少せず介護難民が喘ぎ苦しんでいるのに、前回改悪で入所要件を要介護3以上に限定し、低所得の施設利用者の負担を増大させた。今回の制度改悪は、政権のうたい文句「介護離職者ゼロ」がスローガンに過ぎないことを証明した。
また高齢者の地域での自立支援を住民の手で担うとする手法によって、自治体が負担と混迷を深めるのは火を見るより明らかだ。介護事業者の経営基盤は切り崩され、介護職員の労働条件の厳しさが続く。
3割負担に道を開く
現役世代並み所得世帯には前回2割、今回3割負担という道を作ったが、いずれ誰もが3割負担となることは、医療保険制度を見るまでもない。
世帯当たりの利用者負担の月額上限を4万4400円にしても、いずれ現役世帯並み所得世帯は引き上げられて重くなるだろう。
受益の見返りのない40歳から64歳の第2号被保険者の負担の健康保険並みの総報酬割転換は、8月から始まる。
負担増と利用制限の悪循環を断つには、法人や高額所得者に応分の租税負担をさせて得た財源で国が高齢社会に責任を持つべきだ。
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