今年は、地方自治法施行から70年の節目になる。「憲法の国民主権を実体化するために地方自治条項がある」と解されている。民主主義の根幹が「地方自治」である。だからこそ「地方自治法」は憲法と同じ日に施行されたのである。
明治憲法になし
旧憲法の時代の地方制度の目的は、自治を保証することではなく、国が知事を任命するなど、徹底した中央統制を補完するものであった。近代国家の成立は日本でも「藩」を潰し、地方自治を一切なくすということから出発した。
しかし、行政国家化が進み、中央集権的な画一的統制がとられ、国民代表制が国民の要求や思いを政治に反映させることができない時、その失望が全体主義の「母胎」となった。
ヒトラーは、「議会などは、ただのおしゃべりの場で役に立たない」と議会制民主主義を否定、ファシズム国家を作り出した。日本でも議会制破壊の過程は異なるものの、基本的には同じだった。
その反省から、中央政府の政治だけでは国民主権の要求に応えられないとし、「各地域の多様な必要・要求にうまく応えるために、地域が比較的に小さい自治体で住民による直接民主制も視野に地方自治制度」を憲法に規定した。自治体は行政権と立法権をもつ「地方政府」として、中央政府と向き合う形になった。
中央政府は主に全国規模の課題に権限を持ち、地方政府はそれぞれの地域や暮らしに根ざした仕事と権限を担う。「地方自治は民主主義の最良の学校」と言われるのも、住民により近い自治だからこそ、参加しやすく、学ぶことが多いゆえだ。公権力を国と地方に分散、抑制と均衡を働かせることで乱用を防ぎ、人権を守る。それも憲法に込められた精神だ。
民主主義の両輪
地方自治法は、憲法と車の両輪として同じ日に施行された。70年の節目に改めて問う。地方自治は機能しているか。答えは「危機」というしかない。その象徴が安倍「独裁」内閣である。辺野古新基地建設にかかわる沖縄県への強権的な姿勢が典型だ。
米軍用地特別措置法改定(1997年)は、形の上では全国の米軍基地に適用される点で地方自治特別法(憲法95条に規定)の対象ではないように見えるが、実質的には使用期限切れの米軍用地の継続使用に反対する沖縄を狙い撃ちにしたものだ。憲法の趣旨からすると、沖縄の住民投票案件だった。
また、岩盤規制のドリル役を標榜する「国家戦略特区」は、特定地域を指定するわけだから憲法95条に照らして住民投票が保障されるべき(山本太郎参院議員)だが、行政裁量で行われる意見聴取で足りるとしている。
人口減で、「議会を廃止し、村総会を設置」という提起があるが、今こそ、直接民主制の理念を生かすため、「地方自治の原点」に立ち返らなくてはならない。
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