ヒロシマ・ナガサキ・フクシマでは今年も原水爆禁止世界大会が開かれる。原爆投下から72年、原発事故から6年の大会は、世界の核廃絶の流れに逆行する日本の安全保障政策・原発政策をどう転換させるかが、大きな課題となる。
ニューヨークの国連本部で開かれていた「核兵器禁止条約」の制定交渉会議は7月7日、122カ国の賛成多数で最終草案を採択した。条約の前文は、「核兵器使用の犠牲者(ヒバクシャ)および核実験被害者の受け入れ難い苦痛と、被害に留意する」とし、「ヒバクシャ」という文言が明記された。
「核抑止論」を否定
世界の多くの国々がヒロシマ、ナガサキの悲劇を受け止め、核戦争を起こさないために核兵器の製造、実験、保有、配備、移転を禁止する条約を採択したのである。加えて、米ソ冷戦時代から続く核の威嚇による安全保障政策=核抑止政策を事実上禁止した。
だが、核兵器を保有する米露英仏中の5カ国(国連安全保障常任理事国)と、NATO諸国や日本は核抑止政策をとっており、条約の制定に反対し、米英仏は署名も批准もしないと声明を出した。
問題は、世界で唯一の核兵器被爆国である日本が同じ歩調をとったことであり、ヒバクシャにとっては絶対に許されないことである。
核の傘のニッポン
一方、「核の平和利用」の名による原子力政策、核開発に対して、世界は少しずつ「脱原発」の方向に向かっている。
ドイツは1990年代に「脱原発」を決定し、2022年に全廃とした。スイスは今年5月の国民投票で58%が「将来的に脱原発」に投票し、2050年には全廃する。
台湾の立法院(国会)は1月、6基ある全ての原発を2025年までに事実上廃炉とする電気事業法の改正案を可決した。台湾の原子炉は25年までに順次40 年の運転期間を終えるが、運転期限を延長しない姿勢を明確にし、再生エネルギーに依存する方向を確認している。
ベトナムは、昨年11月に日本とロシアが受注した原発建設を白紙撤回した。白紙撤回には経済的理由もあるが、フクシマ事故の教訓と克服できない核廃棄物の処理問題からくる結論だ。
世界は原発建設中止→再生可能エネルギーへと向かいつつある。だが、安倍政権は核の傘による安全保障、核によるエネルギー・原発再稼働を推進、さらに原発輸出と、世界の流れに逆行する政策を続けている。
アベ政治に終止符を
その責任の一端は「安倍一強」を許してしまった国民にもある。来年末までに必ず行われる総選挙で、立憲野党と市民が共同して闘い、安倍政治を終わらせなくてはならない。ヒロシマ・ナガサキ・フクシマと、多大な犠牲を生んだ核の歴史と教訓を持つ日本が、核兵器と原発にどう向き合うかを世界が注視している。
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