「安倍一強」を突き崩し、改憲策動を押し止められるか否か。それを占う民進党代表選挙は前原誠司元外相を選び出し、野党統一候補を求める運動に背を向けた形になった。新代表の狙いは、安倍政権を利することになるのではないか。
前原新代表は、05年の民主党代表以来の再登板だ。今回の代表選は、安倍政権の「戦争法」強行など、その独走・傲慢ぶりにストップをかけようとする市民と野党の統一候補づくりを左右するものとして注目された。
市民に悲観論が
大方の予想通り、野党統一候補づくりに背を向ける前原氏が、共闘継続を訴えた枝野幸男元官房長官を破った。そのため市民の間に悲観論が広がっている。
前原新代表は「オール・フォー・オール」を訴え、福祉制度を所得で制限しない普遍的な制度に変更しようとしている。それは時宜に叶ったことだが、財源は消費税である。
しかし、税の原則は応能負担であり、それに基づく所得の再配分が政府の任務である。それを怠り、所得のない人にまで消費税を課す一方で、富裕層や大企業の減税を繰り返してきた日本の消費税の歴史と現実を認識しているのだろうか。
しかも、消費税増税で喜ぶのは輸出戻し税を得られる輸出大企業ではないか。現在の税率引き上げ以降、消費者の節約と買い控え傾向が強まった。他方、資本金10億円以上の大企業の内部留保は16年度末で初めて400兆円を超え、403兆4000億円に達した。
無党派層の期待
前原氏は野党共闘の足し算より無党派層に狙いを定める考えのようだが、無党派層が動くにはきっかけが必要で、民主党だけでは無理だ。選挙に勝てる、少なくとも安倍政権に歯止めをかけ、政治に緊張感が生まれるのではとの期待感がなければ、投票所に足は向かない。
連合の神津里季生会長は民進党を「穏健な保守」党と性格づけし、二大政党制の一方として民進党を軸にした野党再編を求めている。しかし、連合の民進票は空洞化している。
連合の中核で、神津会長の出身産別である基幹労連が行った昨年春の組合員アンケートの支持率、自民党23%、民進党18%をどう見ているのか。都議選でも自民党の歴史的大敗の陰で、より深刻だったのは民進党ではなかったか。
もちろん、野党協力の中心は民進党という構えは必要だろうが、支持率が下がる一方という現実を直視してほしい。
まず流れ変える 安倍一強の問題と弊害が噴き出ている今、政治に求められているのは何か。政権交代だろうか。もちろんそうあってほしいが、これだけ野党勢力が後退している中では、まずは流れを変え、その先の政権交代に進むことではないか。
「理念と政策の一致」を求めて、結果として安倍政権を利してはならない。
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