「北」の核実験で、トランプ米大統領は支持者向けに挑発を発信し続け、安倍首相は「対話より圧力」を呼号して「敵基地攻撃能力」保有論が台頭するなど、チキンゲームは止まらない。いいかげんに現実を直視し有効な手を打つべきだ。
「北は自分たちが安全と感じるまで、草を食べても核開発は続けるだろう。圧力は効果がない」と言うプーチン露大統領は正しい。
今、北朝鮮は自分たちが「安全」な環境と思えるだろうか。大国の利害の下で同胞が殺戮し合った朝鮮戦争は「休戦」だ。韓国軍の指揮権を握る米軍と緊張状態にある。米軍はイラクを破壊し、今年4月にはシリアにミサイルをぶち込んだ。
草を食っても開発
核保有国は2000回以上の核実験を行い、核弾頭保有数は露7000、米6800、英215、仏300、中270、インド、パキスタン、イスラエルも大量に保有。加えて、大量のプルトニウム=核製造能力保持大国の日本がある。この現実ある限り、北は「核がないと、イラクのように何をされるか分からない」と思い込むだろう。手持ちの十数発の核弾頭では敵わないと、草を食っても開発する。
せめて7月に採択された核兵器禁止条約に核保有国が賛成していれば、北にも響き、少しはいい方向に向かったであろう。この条約は核抑止力自体を否定するから、核保有国は規範とすべきだ。しかし米英仏は今後「署名も批准もしない」と共同声明を出し、日本の外務省は「北がこんな状況なのに、核保有国の存在を認めない条約には反対」と息巻いた。
際限ない軍拡競争
北を一番安心させる平和の「道具」は、「戦力の不保持」をうたう日本国憲法9条だ。「非核三原則」も役に立つ。隣国の日本がこの理念を大事にし、裸一貫で米国を諌めさえすれば、北は一安心して草を食わずとも国民を富ますことができる。
ところが安倍政権は「平和の道具」を捨てようとする。戦争法を発動してグアムに向かうミサイルを迎撃する可能性を防衛相が公言し、「敵基地攻撃能力保持」や「非核三原則見直し」が政権政党で急浮上している。新型ミサイルをトランプから買わされ、「宇宙部隊」計画など税金の無駄使いに走る。
2基のイージス・アショアをあざ笑うように北がミサイルを増産すれば、日本はトランプ商会からさらに買う。かくて軍事予算は際限なく膨張、「必要最小限の自衛力」は「必要最大限の武力」に化ける。
Jアラートで洗脳
そして国民はJアラートで途方に暮れ、電車は止まる。かつて竹やりとバケツリレーで本土決戦に備えると、疑問を抱きながらも特高と隣近所の眼を気にして訓練させられ、それを繰り返すうちに洗脳されていった。
プーチン大統領の言をかみしめ、夢から醒めて、どうしたら「抑止力」競争をやめられるかリアルに考えるべきだ。
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