新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 道しるべ
  4. 2020.07.14
「種苗法」改定案
日本の農業を売り渡す
 
 農業・農家の保護を捨て、競争力強化を強制する安倍農政に一時停止がかかった。農家や消費者の反対が世論を盛り上げ、種苗法改定案の先の通常国会での成立を阻止、継続に追い込んだのだ。

 「日本を世界で最も企業が活動しやすい国にする」安倍政治は、労働者・国民を犠牲にしているが、農業・農民も多大な犠牲を強いられている。最近では種子法廃止と農業競争支援法の強行だ。

種子法が廃止され

 種子法は戦後の食糧難の時代に米、麦、大豆などの安定供給のために主要農作物の種子を国と自治体の責任で農家に供給することを義務付けた。1952年に制定され、都道府県に農業試験場などが整備され、時間とカネのかかる優良品種の維持、改良、研究、開発を行ってきた。

 種子法は農家や関係団体等の反対を押し切って2018年に廃止が強行され、米、麦、大豆の種子生産をモンサント・バイエルやデュポン、シンジェンタなど多国籍企業を含む民間種子企業に委ねることになった。

 これに対し、全国で種子法を活かす「種子条例」制定運動が展開され、北海道など17自治体で実現、高知など4自治体で制定準備が進み、運動は大きな広がりを見せている。

 種子法廃止と軌を一にして施行されたのが「農業競争力強化支援法」で、国や県の農業試験場が開発・保有する種苗に関する知見を海外企業を含む民間企業に提供することを求めている。

農家の死活問題だ

 そこに追い打ちをかけるのが、種子法改定である。現行の種苗法は農作物の新品種を生み出した人や企業は品種登録すれば、「育成者権」が認められ、保護される。ただし、農家が種取りや株分けしながら作物を育てる自家増殖は「農民の権利」として認められてきた。それを一律に禁止するのが今回の改定案だ。

 法案提出の理由を農水省はイチゴ(とちおとめ)やブドウ(シャインマスカット)などの優良品種が海外に流出して逆輸入され、農家や登録業者が甚大な損害を被っている問題の解決のためとする。

 だが、自家採種を制限するだけで種苗の海外流出を止めることはできない。一方でグローバル種子企業への米麦の種の流出を法で義務付け、農家がそれを買わざるを得ない状況を促進しており、安倍政権のやり方は全く矛盾している。

 自家増殖が禁止されれば、農家は許諾料を払うか、高価な種苗を買わされる。正に死活問題だ。
 ↑上にもどる
一覧へ
トップへ