新型コロナウイルス感染のパンデミックは収束どころか、さらに拡大する状況になっている。そして、本格的な台風シーズンがやってきた。複合災害から命を守ることが最優先課題だ。
昨年は、台風19号をはじめ、九州北部豪雨、台風15号・21号などが甚大な被害をもたらした自然災害が続いた。
今年も局地豪雨で尊い人命が奪われたが、本格的な台風シーズンを迎え、コロナ渦との複合災害が心配される。感染拡大が広がる中、密閉・密集・密接の「三密」回避を避難所でどう確保するのか、今すぐ対策を準備しなければならない。
災害関連死が増加
近年、災害での「関連死」の増加傾向が指摘されている。災害による「直接死」に対する「関連死」の割合は、阪神・淡路大震災では16.9%だが、東日本大震災では19.9%となり、熊本地震では直接死の4倍近くに達した。西日本豪雨でも23%の関連死があったと報告されている。
避難所の劣悪な環境は、高齢者や体力の弱い人にとっては起居が困難であるだけでなく、救われた命が呼吸器系・循環器系疾患で関連死を招いている。
熊本地震では、建物の倒壊を恐れて大勢の避難者が車中泊したことが多数の関連死を招いた原因とされているが、避難所が敬遠されたことには変わりはない。
劣悪の避難所環境
避難所のイメージは、「ブルーシートとダンボールとおにぎり」だ。日本の避難所の環境は、世界標準から際立って低水準だ。
日本医師会は今年6月、「新型コロナウイルス感染症時代の避難所マニュアル」を公表した。「事前に指定した避難所に加え、可能な限り多くの避難所を開設するべきだ」とし、「ホテルや旅館、公務員宿舎や公営住宅といった施設への分散避難も選択肢」と提言している。
「マニュアル」は、各地の医師会と自治体が連携して取り組むことも促している。各自治体の喫緊の課題は、第一に実効性ある住民避難を徹底するために関係機関や住民組織と連携し、実行計画を再点検することだ。
7月末の豪雨で山形県の最上川が氾濫し、住宅約700棟が浸水したが、死者や行方不明者は出なかった。住民組織と関係機関の連携で徹底した避難指示の結果であった。
第二は、住民が安心して避難できる場所の確保と医療等の態勢だ。医師会等との連携も必須。「生命第一」の態勢確立が焦眉の課題だ。
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