原発輸出計画は全面的に破綻した。独占資本と安倍前政権は原発輸出を成長戦略の柱と位置付け、世界中を行脚してきたが、ついにすべての計画が行き詰まり、安倍政権とともに終焉した。
英で無用の長物に
日立製作所は、2012年に英国の原発事業会社ホライズン・ニュークリア・パワーを独の電力大手から買収し、英国中西部のアングルシー島に、20年代前半の運転開始を目指し、130万kW級の改良沸騰水型軽水炉2基を建設する計画を立てていた。
しかし一方では福島第一原発の事故以来、安全対策費が急騰したことにより、他方では洋上風力などの自然エネルギーが普及したことにより、英国にとって無用の長物になった。
総事業費3兆円のうち英政府が2兆円の融資を提示、日立などの出資分には事実上、日本政府が債務保証を付けるという枠組みを作り、国家が独占資本の後ろ盾になるという形まで取ったが、さほどの利潤が見込まれなくなった。
昨年1月に日立は、計画の「凍結」を表明したものの、成長戦略の目玉に「インフラ輸出」を掲げる安倍政権を立てて「撤退」は菅政権に代わるまで宣言されずにいた。だが、英国では原発建設はとうに終焉していたのだ。北海油田の枯渇に対しては、洋上風力などの拡充で対応できていた。
三菱、東芝も撤退
すでに三菱重工は地震国・トルコの原発計画を中止せざるを得なくなり、東芝は、2年前に海外での原発事業から完全に撤退した。こうして安倍政権を継承した菅政権の原発輸出による「成長戦略」は完全に消滅した。
三菱や日立や東芝は、国内で原発の新設が困難になったから輸出で稼ごうと考えたのであるが、もうそんな時代ではなくなっている。
競争力を完全喪失
世界全体の自然エネルギーによる発電量が、昨年初めて原発を上回った。原発の発電コストは高く、世界のエネルギー市場で競争力をすっかり失っている。特に風力発電の成長率が高く、太陽光がこれに次ぐ。
日本の洋上風力のポテンシャル(潜在発電能力)は世界でも最も恵まれており、これで全電力をまかなうことも困難なことではない。この地震列島で原発はすべて速やかに永久停止し、純国産エネルギーである洋上風力発電の開発にこそ、政府も経団連も力を入れるべきだ。
乱開発・公害の防止を前提として、陸上の風力や太陽光や地熱なども重要だ。
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