「規制改革」が政権のキーワード。まず携帯電話料値下げやオンライン診療恒久化で既得権益に切込む構えだが、本丸は経済社会の総デジタル化ヘデジタル庁の新設とIT基本法抜本改定にある。
デジタル庁新設ヘ準備室が発足した。菅政権は庁設置を行政縦割り・前例主義の打破、既得権益に捉われない規制改革の突破口かつ司令部と位置づける。
来年の通常国会に、IT基本法の全面改定案と共にデジタル庁新設関連法案を提出する。25年度までの経済社会の総デジタル化、そして抜本的なデジタル変革をめざす。背景には、「第4次産業革命」の覇権を巡る強国間競争がある。
全てオンライン化
菅政権がデジタル社会化の基盤に据えるのが、マイナンバーカードの普及徹底と行政手続きのオンライン化である。
カード普及は22年度中に達成し、運転免許証や健康保険証をカードに組み込み、さらにカードはスマートフォンに搭載させる。省庁間・自治体間でのデータ様式の統一と押印廃止を進め、諸手続き全てをオンラインで行えるようにする。
「利便性向上」を宣伝文句に、行政事務の効率化、人員とコストの削減、企業活動のためのインフラ整備を図るのだ。
個人情報がマイナンバーで統合されると、権力による恣意的利用の危険が私たちの日々の生活や行動にまで及ぶ。サイバー攻撃による情報の漏洩は、甚大で広範囲な被害をもたらす。災害等によるデジタル中枢の機能停止は、生活基盤への壊滅的打撃となる。
EUのAI倫理ガイドラインは、「市民自身によるデータの完全管理」を定める。個人による自身の情報管理の保障、そのための独立した第三者機関の設立が必須だ。同時に情報データの管理は、課題別かつ地域分散的でなければならない。
権力の恣意的利用
利便性向上や抜本的変革で時間やコス卜が減っても、生活の豊かさには繋がらない。政府や財界はスキル更新努力や副業・兼業を押し付ける。私達は、経済社会の総デジタル化が労働時間の短縮、多様な生活観を包摂できる社会へ同時に進むことを要求する。
IT基本法制定は2000年。03年は電子政府計画だが、進まず、諸外国とのデジタル基盤の差は開くだけ。最大の理由は政府への国民の不信だ。菅首相は日本学術会議の新会員候補6人を任命せず、説明も拒否。恣意的な権力行使と透明性欠如の政権に、私達の個人情報を委ねられるわけがない。
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