新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 道しるべ
  4. 2020.11.10
少年法「答申」
厳罰化を止めなくては

 法相の諮間機関・法制審議会は少年法の適用年齢引下げ問題については見送ったものの、18、19歳の事件を厳罰化する法改定を答申した。一連の厳罰化の流れに沿った答申で、容認できない。

 10月29日に行われた答申は、22年に成人年齢が20歳から18歳に下がるのを踏まえ、成人と同様の刑事手続きを取る検察官送致(逆送)の事件を拡大し、起訴後は実名報道を解禁するという改悪・厳罰化だ。少年法の適用年齢を引下げるか否かについては、言及しなかった。

5度目を許すな

 少年法は、殺人など故意の犯罪で被害者を死亡させた16歳以上は原則として逆送すると規定しているが、答申はこれを拡大し、18、19歳に限って強制性交等や放火、強盗なども原則逆送の対象に加えるとしている。

 地下鉄サリン事件などを起こした一連のオウム真理教事件以来、厳罰化・重罰化の流れがあるが、その傾向は少年司法にも反映している。

 00年以降、@少年審判への検察官関与制度の創設A重大事件を犯した少年を原則として検察官送致とする制度の創設B警察調査の導入C少年院送致年齢の引下げなど、少年法は4度の改悪が行われてきた。そして、今回の答申である。

 この動きは、少年法が目指す「少年の健全育成」や「成長発達権の保障」より、社会の処罰感情
・応報感情が反映したものだ。自民党が執拗にに主張する適用年齢の引下げは、今回は見送られたが、法制審の答申のように厳罰化の流れは変わっていない。

政治決着に追随

 法制審は少年法の見直しを17年から議論してきたが、適用年齢引下げについては結論が出なかった。そこで与党が乗り出し、適用年齢引下げを主張する自民党と、更正重視の公明党が妥協点としたのが、「適用年齢の引下げ見送り、18、19歳の厳罰化」だ。

 法制審は今回、政治決着に追随する形で厳罰化の答申をした。異例であり、専門的立場で検討する任務を放棄したと言わざるを得ず、法制審の汚点だ。

 答申はまた、罪を犯した少年を全て家裁へ送り、家庭の事情などを調べて保護処分を決める現行制度は維持するとした。少年事件は、虐待や貧困など家庭環境が背景にあるケースが多い。立直りには、事情に応じた支援が必要というのが少年法の精神で制度の維持は当然だ。

 法務省は、次期通常国会に改定案を提出する方針で、少年法改悪を許さない世論作りが急がれる。

 ↑上にもどる
一覧へ
トップへ