総額人件費削減≠容認
原告は最高裁に上告
定年後の再雇用についても労働契約法が適用とされるとして、長澤運輸(本社・神奈川県横浜市)の賃金格差は無効とした東京地裁の判決を東京高裁(杉原紀彦裁判長)は11月2日、「賃下げに合理性がある」として、不当に破棄した。
定年再雇用の嘱託社員、大型タンクローリー運転手3人(全日本建設運輸連帯労働組合関東支部組合員)が仕事内容は同じなのに定年後の再雇用で賃金を減らされたのは違法だとして、勤務先の長澤運輸に、正社員と同じ賃金の支払いなどを東京地裁に求めた。判決は「再雇用後も同法が適用される」と認定、「職務が同一であるにもかかわらず、有期、無期雇用の間に賃金格差を設けることは、特段の事情がない限り不合理だ」として、未払い賃金の支払いを命じた。
被告の長澤運輸は高裁に控訴、東京高裁は11月2日の判決で一審判決を真っ向から否定して取り消し、「賃下げは社会的に容認され、一定の合理性がある」とした。
経団連の「再雇用は、労働契約法が適用されない」に100%沿った判決になった。
判決後、原告組合員は「納得しがたい」と憤り、「大変な不当判決、到底納得しがたい」と判決後、3人の組合員は霞が関の司法記者クラブで会見した。「正社員として34年間、セメント運搬業務に従事。定年退職後に再雇用され、業務内容はまったく変わってい」と判決後、3人の組合員は霞が関の司法記者クラブで会見した。「正社員として34年間、セメント運搬業務に従事。定年退職後に再雇用され、業務内容はまったく変わっていないにもかかわらず、賃金は下げられた」「一審では主張が全面的に認められただけに、最高裁でもう一度審議してもらい」と勝利するまで闘い続ける決意を語った。
長澤運輸は「会社の主張が正当に認められたと理解している」。総額人件費削減を進める経済界も「当然な判決」と歓迎する。
争点は、定年退職後でも同一労働同一賃金が認められるかどうか。一審判決は、有期契約の労働者と正社員の待遇に不合理な格差を設けることを禁じる労働契約法は、「定年後の再雇用にも適用されると認定」して原告側の請求を認めたが、高裁判決は、適用されるとしたものの「原告の賃金の減額幅は他社の平均を下回り、会社の赤字なども考慮すると、賃下げは違法ではない」と判断した。
さらに賃下げは「人件費の増大を避け、若年層を含めた労働者の安定的な雇用を実現する必要などから、一定の合理性がある」と加えた。全くもって経営側の論理で高裁判決が下されたと言える。
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