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2017.03.28
過酷労働の改善へ一歩
ブラック企業のプリントパック労組

  
  不当労働行為はね返して和解


 印刷通販「プリントパック」(京都府向日市)が、長時間労働是正を求めた労働組合役員に対して賃金差別等を行った不当労働行為事件について2月13日、中央労働委員会から示された和解案を労使が受け入れて和解が成立した。「ネットで申し込むだけで印刷物が手元に届く」という、業界に先駆けたビジネスモデルを開拓し、売上げは10年間で約30倍に急増した同社の闇を追った。


 「安い印刷」の裏の過酷な労働


 印刷産業は、最盛期出荷高9兆円規模をほこっていたが、「紙から情報」の転換で、2015年5兆6000億まで産業規模が縮小した。とくに、印刷関連産業の中で製版業は生産器機のデジタル統合が進み、多くの部門が印刷会社社内で内製化されたことでスクラップ対象となった。
 株式会社プリントパックは前身が進洋製版という製版会社であったが、生き残りをかけて業界に先駆けとなった「印刷通販」への転換を進めていった。
 「印刷通販」はインターネットを通じた受注で、主に個人ユーザーを中心として代金前払いで製品を生産する。1日7000件から1万件の受注を24時間365日操業で出荷している。同社は、05年売上7億円から15年同206億円とわずか10年で売上げを30倍にする急成長を遂げ、今や雇用労働者800名を超す企業に成長した。
 その急成長を支えたものは、大規模な最新鋭大型機器の導入で徹底した作業の単純化の実現と、あまりにも過酷な長時間低賃金の労働であった。 勤務は2交代制で、昼勤、夜勤12時間ずつ働き、労働者の休憩時間中も機械は稼働し続け、おちおち食事もしていられないのが実態だ。
 基本給は13万5000円、何年経験を積もうが上がらない。この他に、残業90時間分の固定残業代約10万円があり、毎月何とか20万円ほどの手取りにはなる。しかし、残業を拒否することはできず、毎日へとへとになるまで働かざるを得ない。
 2009年末、この会社で働く労働者から「月130時間の残業が常態化しており、このままでは身も心ももたない」と地域労組に労働相談が持ち込まれ、2013年に2名が個人加盟の地域労組に加入し労働条件の改善を求めて起ち上がった。


 目に余る不当労働行為


 全印総連ユニオン京プリントパック京都分会結成後、会社に団体交渉を申し入れると、その1週間後には組合分会長と書記長の2人に対して異動命令が出された。さらには、他の労働者との接触を妨害するため、@時差出勤を命じて朝礼などに出席させない、A昼食は分会長や書記長の隣に座ることを禁じて席の移動を命じる、等が行われた。
 翌14春闘では、非組合員は月額5000円〜1万円の月額賃金のアップに対して、分会長は0円、書記長は500円という極めて低額な差別的な回答であった。また、夏季一時金は、平均で約20万円にもかかわらず、分会長は0円、書記長は3万円。年末一時金は2人とも0円と、待遇改善を求める組合への賃金差別・支配介入は誰の眼にも明らかになっていった。
 組合員に対する不当議にもかかわらず改められるどころか、ますます酷さを増していくなかで、2015年に京都府労働委員会に不当労働行為の救済申し立てを行った。
 そして、翌2016年7月に同労働委員会は、組合の主張を認め、印刷通販「プリントパック」が社員2人を昇給させず、賞与も支払わなかったのは労働組合への加入を理由とした不当労働行為と認定し、他の従業員の平均賃金との差額分を支払うよう救済命令を交付した。
 この審問過程では、会社側証人は@組合員の異動は労働組合のストライキを危惧した予防措置である、A組合員の定時退社はストライキのようなもの、などの不当労働行為を上塗りするような証言を行い、さらには、会社はこの命令を不服として中央労働委員会に再審問を申し立てた。
 中央労働委員会では、2016年11月の第一回調査審問以降、委員会からの強い要請もあり、「和解」を模索する進展となった。


 職場は変えられる


 しかし、プリントパックが2016年12月ブラック企業大賞業界賞を受賞したことで事態は一時暗転した。
 会社が組合分会長・書記長に対して「ブラック企業大賞に対して組合が働きかけた」とする嫌疑を口実に懲戒調査のため「出頭を命じる」呼出状を交付した。
 第二回調査審問は終日にわたり、この「出頭命令」で紛糾し委員からの調停もあり、その場で会社側に面談も処分も行わないことを約束させた。 その後、断続的に和解に向けた協議が展開された結果、2月13日の第三回審問で和解が成立した。
 この事件を担当した中村和雄弁護士は、自身のブログで「解決金の支払いと賃金額の是正を図るなど和解内容は、組合及び組合員にとって満足できるものです。会社は労働時間の短縮に向けて努力することを表明しており、今後労使間の健全な関係が構築されることが期待できます」と述べている。
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