多様な学び保障法を実現する会 中村 国生
(NPO法人東京シューレ事務局長)
不登校は教育機会の保障の問題
昨年末12月7日、「義務教育機会確保法」が成立した。名称を「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」といい、具体的には不登校の子どもと、夜間中学で学ぶ人を支援する理念法である。
立法の取組みは、筆者をはじめとするフリースクール関係者が超党派フリースクール等議員連盟に働きかけ、また同時に、夜間中学関係者が夜間中学等義務教育拡充議員連盟に働きかけるかたちで、ともに草の根から持ち上げて実現した。幾重もの紆余曲折もあったのだが、それは次回に紹介することとして、まずはどのような法律なのか、不登校の部分を中心にみてみたい。
第一条の目的は、教育基本法と子どもの権利条約にのっとり基本理念を定めること、国・地方公共団体の責務を明らかにすること、基本指針を策定し施策を総合的に推進することとしている。教育法に子どもの権利条約が初めて入ったというから画期的だ。
第三条の基本理念には、すべての子どもが豊かで安心できる学校にすること、不登校の子どもの多様な学習活動の実情を踏まえ、個々に応じて支援するこ分に尊重して、年齢・国籍・その他の事情に関わりなく教育機会を確保すること、国・地方公共団体・民間団体の相互の密接な連携の下で行うこと、を定めている。
不登校はその子の問題ではなく、教育機会の保障の問題であり、国・地方公共団体の責務の問題だと位置づけ、財政上の努力も盛り込まれた(第四〜六条)。文科大臣は基本指針を定めるが、民間を含めた関係者の意見を反映させて策定することも明記した(第七条)。
学校においては先生と児童生徒の信頼関係や、子どもどうしの良好な関係をつくる取組みをすること(第八条)や、東京シューレ葛飾中学校のような学習指導要領によらない教育課程特例校や教育支援センター(適応指導教室)
を整備促進(第十、十一条)することとした。
学校環境を多様で包摂共生的に
そして、この法律のもっとも“肝”だと言われているのが、第十三条「学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、状況に応じた学習活動が行われることとなるよう、児童生徒及びその保護者に必要な情報の提供、助言その他の支援を行う」である。
本来私たちが目指していた多様な学びを「選べる」までにはならなかった。だが、その重要性が法律で認められた。また、休養の必要性があることも示した。
長期の休み明けに子どもの自殺が急増する状況がこの国にはある。この条文をしっかりと子どもたちに伝えていけばきっと救えるいのちがたくさんあるに違いない。
その他、夜間中学校の推進(第十四、十五条)、調査研究(第十六条)、国民の理解推進(第十七条)、人材の確保(第十八条)、教材等の提供(第十九条)、相談体制の整備(第二十条)となっている。
そして、附則には「経済的支援の在り方の検討」と3年以内の「教育機会の確保等の在り方の見直し」など、次につながる内容が入った。学校以外でも公的支援が出ること、学校以外でも義務教育が認められることにつながる可能性を含む内容である。
衆参両院では、反対や慎重姿勢をとった共産、社民、自由に配慮して、子どもや保護者を追い詰める支援にならないようにすること、学校環境を多様で包摂共生的なものとすること、教育課程特例校や教育支援センターに営利目的での参入を認めないことなど全九項目もの附帯決議がつけられた。
この附帯決議も、私たち市民がしっかりと活用していけば生きていくはずである。
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