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2017.03.07
「義務教育機会確保法」が拓くもの<上> 
さらに多様な教育を選べるように

  

 
フリースクール全国ネットワーク代表理事    奥地 圭子
                

 前回で、義務教育機会確保法はどんな法律かをお伝えしたので、今回は、なぜ私達が法律づくりに取り組んだか、この法律の意味や課題をどう考えているかを述べたい。


 立法の趣旨を生かそう


 ご承知のように、日本は世界に誇る就学率の高い学校制度を持っている。しかし、小中学生の不登校は12万人の高止まり状態で、国が40年来行ってきた学校復帰政策は効果を上げていない。そればかりか、不登校はあってはならないものという観念を多くの人に植えつけ、不登校の子ども自身が自分はダメ人間と思い、自信を失くし、自責感や罪悪感に苦しんで、つらい日々を送ってきた。
 民間で、学校以外の居場所・学び場を創ってきた私達は、そんな子ども達を受けとめ、子ども達は元気に育った。そこで、フリースクールが社会に認められ、公的支援が得られないものかと考え、8年前のフリースクール大会で「多様な学び保障法」のような、希望者が学校外を選べる法律を求める決議をし、取り組んできたものである。
 結果としては、選べる制度にはならなかったが、不登校支援が法律として定められ、国や地方自治体の責務が明記されたことは大きい。とくに13条に、休むことの必要性や学校外で学ぶ重要性が入ったことは、日常生活の中でしっかり活用したい点である。
 しかも、子どもの権利条約の趣旨にのっとって、推進するようになっているので、常に「子どもの最善の利益」が尊重されねばならないのである。また、基本理念の中に公民連携の下に行われるようにすることや、基本指針の中に民間の団体の意見を反映させるように、と述べてあり、公と民がつながる方向が示されている。
 不登校支援法であるが、ある不登校の子をもつ母親にみせた時「私は、『全ての児童生徒が安心して教育を受けられるよう学校の取り組みをしなさい』というのが最もうれしいです」と言われた。その通りで、学校も良くしていこう、しかし、休むことが必要な時もあるし、学校外でやる事がその子の状況に応じる学習活動でもあり、必要な支援をしていこうよという法律なのである。
 法律で学校外の学習を認めたのは75年ぶりのことである。わが国では、18歳以下の青少年の自殺が夏休み、春休みなど長期休みのあと学校が始まる時に突出して多い。これは、学校が苦しくても登校しなければならないという観念と関係しており、休みの必要性や学校外学習も認めたこの法律ができたことで、自殺防止にも役立つと思われる。


 人権としての学習権


 教員にとっても、学校に来れないとか来たくない子を何とか登校させようとする指導は子ども・親の不信感をかったり、自分でも消耗したと思うが、本人の状況に応じて関わればよく、公民連携で学校外も視野に入れて対応していってよいので楽になると思う。
 憲法で保障されている教育を受ける権利が不登校などで、これまで十分に満たされているとは言えなかった状況があった。その子たちに教育機会を確保しよう、という法律が成立した意義は大きい。しかも、年齢・国籍を問わず保障しようという点は、人権としての学習権をより広げ歓迎である。
 ただし、本当の意味で多様な教育を選べるにはいたっていない点、今後社会の理解を深めながら改定していきたいと考えている。
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