政官癒着の構造を斬る
学校法人森友学園が開校・運営する瑞穗の國記念小學院(大阪府豊中市)の学校用地が近隣の10分の1の価格で払い下げられた問題は、籠池泰典理事長の辞任で多くの疑惑が渦巻くなか幕引きが図られようとしている。この問題の背景にある安倍首相、日本会議、大阪維新の会とのつながりを考えてみたい。
安倍首相、大阪維新の会、森友学園・籠池泰典理事長は日本会議の思想を共通基盤としている。
日本会議国会議員懇談会には280人を超える国会議員が参加しており、第三次安倍内閣の閣僚19人のうち15人が所属している。考えの基本は、反共、皇室の尊重、憲法改正、愛国教育の推進、国防の充実、伝統的家族観の尊重である。
現在は一点突破で「緊急事態条項」で憲法を変えようとしている。 これらは、安倍内閣が取り組もうとしている政策に大きな影響を与えており、文部科学省から2月に公表された小中学校の学習指導要領案の前文に「国を愛する態度」が加わり、幼稚園教育要領案には「わが国の国歌に親しむ」が追加された。
時代錯誤の教育勅語
森友学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)は教育勅語や愛国行進曲等を園児に暗唱させている。園児が教育勅語の「朕惟フニ、我ガ皇祖皇宗國ヲ肇ルコト宏遠ニ」を大きな声で暗唱している映像をみるとあきれるよりも、怒りさえわいてくる。
そもそも教育勅語は1890(明治23)年に発布され、以降日本は万世一系の天皇を中心にした神の国であるという考えが教育などに浸透していった。稲田朋美防衛相が言う「教育勅語の中の親孝行とかはよい面だ」というのは、「孝行等の道徳とともに天皇の臣民としての秩序をとく」教育勅語の木を見て森を見ない一面的な評価だ。
現在は辞任したようだが、瑞穗の国小学校の名誉校長に安倍昭恵内閣総理大臣夫人が就任していた。しかも15年9月の名誉校長就任の講演で、塚本幼稚園での園児に教育勅語を暗唱させる等の特異な教育方針を絶賛していた。
森友学園の籠池理事長は日本会議大阪の幹部であり、安倍首相も国会答弁で「私の考え方に非常に共鳴している方ですね」「妻から籠池先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」と評価していた。
学校認可への不明朗な背景
このような森友学園が運営する小学校がなぜ認可に向けて動きだしたのだろうか。大阪維新の会とのつながりが見えてくる。
11年夏、大阪府は森友学園側から新設予定の小学校の規制緩和の要望を受ける。12年4月大阪府はこの小学校のために認可する基準を緩和した。その結果資本がなく借金があっても小学校を運営できるよう変更になった。
私立小学校の設置については、私立学校審議会に諮問し、答申を受け、設置認可を判断するのは松井一郎大阪府知事(大阪維新の会)だ。14年4月頃、森友学園籠池理事長夫妻が鴻池祥肇参院議員と面談、鴻池議員は08年塚本幼稚園で行われた「NPO教育再生地方議員百人と市民の会」主催の講演会で「園児の教育勅語暗唱に感動した」と述べている。
この主催団体は1999年大阪市内で結成され、理事長は辻淳子大阪市会議員(大阪維新の会)であり、教育現場に教育改革・正常化のもと学校行事に「国旗・国歌の義務付け」を押しつけている。
同年10月森友学園から小学校の認可申請。申請したのは森友学園の運営をしようとしている小学校だけであった。同年12月18日府私学審議会では財務状況等の問題点指摘があり、継続審議になる。
この時期に豊中市選出の中川隆弘府会議員(大阪維新の会)が森友学園から要望を受ける。15年1月27日私学審議会臨時会で寄付金の受け入れ状況、入学志願者状況を報告するとの条件付きで「認可適当」、同年2月国有財産近畿地方審議会が土地貸し付けと売却に「処理適当」と答申。同年3月から16年12月まで私学審議会が計6回開かれ、森友学園について報告・論議、16年4月1日私立学校の設置認可権限を教育長に委任した。 17年2月 私学審議会臨時会開催、入学希望者が定員の半分程度であり、また学校法人の財務状況に不安がある、森友学園が運営する塚本幼稚園で保護者向けにヘイト表現がある文書が出されたこと、教育内容に「思想教育のような部分がある」等の意見が出され、認可に向けた最終判断3月に持ち越しにされた。
17年3月、私学審議会定例会で教育庁に認可権限があるのに、松井大阪府知事は3月中の認可判断先送りを表明し、逃げの姿勢を取っている。 この森友学園の問題は日本会議と大阪維新の会の議員が大きくかかわっていることは明らかだ。 (大阪発)
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