ノルウェー・ノーベル賞委員会は10月12日、EU (欧州連合、27カ国)に平和賞を授与すると発表、地域機構としての受賞は初めてで歓迎と批判が同時に起きた。
20世紀の大戦を経て「平和・和解・民主主義・人権に対する貢献」が授与理由だが、米国務省が祝意を表明。カズヌーブ仏欧州問題担当相が「欧州の価値観により圧政をなくす」として域外関与強化の方針を示す一方で、チェコのクラウス大統領は「悲劇的過ちであり、官僚機構ではなく個人が受賞すべきだ」だと述べ、仏左翼党メランション党首も強く批判した。
今回の受賞は、最悪の金融危機でユーロへの信頼が揺らぎ、東欧諸国が導入を見合わせ、英国がEU脱退の是非を問う国民投票の動きを見せ、各国労働者・市民が緊縮財政反対、雇用を求めるストやデモが頻発する時期に決定された。
「平和と和解よりも反乱と暴力が生じている」と市民の間では当惑と怒りが広がっている。先にアテネを訪問したメルケル独首相は、数万人の抗議デモと多数の逮捕者を出す中で、政府間の緊密な関係をアピールした。
国際社会からは批判が出ている。EUが人権抑圧国に対する武器輸出禁止の原則を揺がせ、サウジアラビアへ戦車を輸出、イランの石油・金融部門に制裁を強化し、シリアの不安定化に公然、非公然に関わるなど米中東政策に協力、「平和賞の名声は大きく損なわれている」(
中国新華社通信)と。
5月のEU統計で25歳以下の失業率は53・8%、1対99の矛盾は熾烈だ。
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