世界保健機構(WHO)は5月5日、パキスタン、シリア、カメルーンでポリオ(小児マヒ)感染が拡大、各国に向けて「非常事態宣言」を出し、渡航制限などを勧告した。さらにこれらの国からアフガニスタン、イラク、赤道ギニアへそれぞれ拡がっており、「このままではポリオ根絶は失敗に終わる」とWHOは警告した。
パキスタンでは国外に通じるハイウェーと国際空港5カ所にワクチン接種所が設置された。ポリオは1988年以来の努力で2012年までにほぼ根絶にまで成果を上げていたが、再び脅威となって現れてきた。ウィルスは便を介して口から感染、神経を侵し、手足をマヒさせる、死に至らせる。
WHOによれば、発症の8割はパキスタンであり、1999年以来、ポリオ撲滅を達成していたシリアでの発症例もパキスタン由来のウィルスという。さらに危険なのは、通常は発症が低い冬の季節、1月から4月にウィルスが活発だったことである。
上記に加えて、エチオピア、イスラエル、ナイジェリア、ソマリアも危険性の高い国としてあげられた。貧困、とりわけ戦争や政治的不安定状態からくる公衆衛生上の問題がある地域ばかりだ。
こうした国々ではワクチン接種チームがテロ集団によって殺害されたり、外国の情報機関が「医療チーム」を戦争遂行手段として利用したことの経験から住民の信頼を失ったりしている。パキスタンでは国連自ら接種チームを引き揚げさせた。予防接種が行き渡らないなか、犠牲になっているのは幼年期の子どもたちだ。
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